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フィックの拡散方程式

拡散とは

流体(液体でも気体でも)の中で乱雑に押し合う運動で移動していく過程を拡散という (固体中の原子でさえゆっくりではあるが動き回ることがある) 分子の運動はでたらめな方向に短いジャンプをしているように見ることができこれをランダム歩行という。 液体内に始め濃度勾配があると(例えば液体のある領域で溶質濃度が高いなど)、 分子が広がる速度は濃度勾配Δc/Δxに比例するから 拡散速度∝濃度勾配 と書ける。この関係を数学的に表すには、流束Jを導入する。 流束とはある時間に仮想的窓を透過する粒子の数を、窓の面積と時間で割ったものである。すなわち J=窓を通過する粒子数/窓の面積×時間 (11・18a) である。そうすると、 J=-D×濃度勾配(dc/dx) (11・18b)となる。 この式をフィックの拡散の第一法則という。係数Dは面積を時間で割った次元(単位はm^(2)s^(-1))で拡散係数という。 Dが大きければ拡散が速い。その例を表(11・1)に示してある。(11・18b)式の負号は、濃度勾配が負であれば流束は正である (左から右へ流れる)ことを示す。ある時間にあるも度を通過する分子数を求めるには流束に窓の面積をかければよい。 (11・18b)式の濃度が盛る濃度であれば、流束は分子数でなく、モル単位で表される。 分子の拡散は流体の巨視的な全体としての運動(大気中で風が吹くとか湖で水が流れるなど)で促進される。 普通は後者のほうがはるかに強い。この運動を対流という。拡散は非常に遅いので溶質分子がひろがるのを促進するために流体を 攪拌したり、扇風機でまわしたり、あるいは風や嵐などの自然現象を利用して対流を起こさせる。 流体の物理化学で最も重要な式の一つは拡散方程式である。この式によって不均一な溶液中の溶質の濃度が変化する速度を予測できる。 簡単に言えば拡散方程式は溶液中で濃度にしわがあるとそれが自然に伸びる様子を表すものである。 拡散方程式は言葉で表現すれば次のようになる。これをフィックの拡散の第2方程式という。 ある領域での濃度の変化速度=D×(その領域での濃度の曲率) 曲率というのは濃度の皺の酔い方の目安である。この方程式の両端の濃度は数濃度(たとえばmoleculesm^(-3))でモル濃度でもよい。 なお拡散方程式の数学的な形はdc/dt=D×(d^2c/dx^2)である。 二段の導関数d^(2)c/dx^(2)は濃度cの曲率の目安と解釈する。 濃度は時間と位置の関数であるから導関数は偏導関数であって、普通は∂c/∂t=D×(∂^2c/∂x^2)と書く。 拡散方程式からわかることは・ある領域で濃度一様であるか、またはその断面で勾配が一定であれば、濃度には正味の変化がない。 ということである。それはその領域の一方の壁から入ってくる速度が反対側の壁から出ていく速度と等しいからである。 濃度の勾配が領域内で変化している場合だけ、つまり濃度に皺がよっている場合だけ、濃度の時間的な変化が生じる。 その場合は ・曲線が正のところでは濃度の変化が正で谷が埋まる方向の変化である。 ・曲線が負(山)のところでは濃度の変化が負で山が崩れて広がろうとする。 拡散はランダム歩行の結果であると考えると、拡散という現象がもっとよく理解できる。 ランダム歩行は乱雑な(ランダムな)方向に(一般的には)乱雑な長さのステップを踏む歩行である。 ランダム歩行する分子はある時間のうちには多数のステップを踏むであろうが、 出発点から離れるステップもあれば元へ戻るステップもあるから、出発点から遠く離れた場所に見いだされる確率は小さい。 時間tの間に出発点から離れた正味の距離は根平均二乗距離d=〈x^(2)〉^(1/2)で測る。〈…〉は平均値を表し、 xは出発点からの距離である。一次元のランダム歩行では、d=(2Dt)^(1/2)である。 つまり正味の距離は時間の平方根に比例して増えるだけなので、出発点から(平均として)2倍遠いところに粒子を 見出すためには4倍の時間待たなければならない。 拡散係数と、分子がステップを踏む頻度と各ステップの長さの間の関係式をアインシュタイン-スモルコウスキーの式という。 D=λ^(2)/2τ) (11・21)ここでλ(ラムダ)は各ステップの長さ(今のモデルでは各ステップは同じ長さと仮定した) τ(タウ)は各ステップに要する時間である。この式から長いステップを早くとる分子では拡散係数が大きいことがわかる。 τは分子がほかの分子のそばに居る状態から突然次の位置へジャンプするまでの平均の寿命と解釈することができる。 温度が上がるとまわりの分子からの引力から逃れるのが容易になるので、拡散係数は温度とともに増大する。 ランダム歩行の頻度(1/τ)がアレニウス型の温度依存性に従い、活性化エネルギーがEaであるとすると、拡散係数は D=D0e^(-Ea/RT) (11・22)に従う。粒子が液体内を拡散する速度は粘度に依存するので、 粘土が低い液体ほど拡散係数が大きいはずである。すなわち、η∝1/Dとなると思われる。ηは粘性率である。 実際、アインシュタインの式は、D=kT/6πηa(11・23)であることを示している。 aは分子半径である。これから、 η=η0e^(Ea/RT) (11・24) が導かれる。指数の符号が変わっていることに注意のこと。粘度は温度が上がると減少する。指数の項に強い温度依存性のほうが (11・23)の分子にあるTに比例する弱い依存性に勝ると考えている。 (11・24)式の温度依存性は少なくとも比較的狭い温度範囲 では実際観測されている。Eaの大きさは分子間ポテンシャルで支配されているが、それを計算するのはすごく難しい問題で まだほとんど解決されていない[1]

定常状態で電荷移動反応が速い「可逆」の場合について、電極反応の速度は、「物質輸送」と「電荷移動」のうちのどちらか、 あるいは両者がからみあって支配していることは既に述べたが、ここで考えている反応系は電解銅が非常に速い「可逆な(reversible)系」 を考えているので、物質輸送が電極反応を支配している。 物質輸送としては、拡散、対流、泳動があるが、支持塩が多量に含まれている電解液中では電極反応に関与する化合物の泳動による輸送は無視できる。 電解液が乱流にならないように、定常的に攪拌されているときには、物質輸送は対流と拡散の両者によって行われているので、もし電極の電位が反応式(5.4) の酸化還元電位よりも十分プラスにあれば、図5−16に示すような、Redの濃度プロフィールになっている。 今反応式(5.4)は可逆であると考えているので、電極電位Eと電極表面のRed、Oxの濃度の間にはある時間tにおいて、次のようなNernstの式が成立している。「可逆」


[1]千原秀昭、稲葉章、アトキンス物理化学要論、東京化学同人、2012、P249〜252

[2]藤嶋昭、相澤益男、井上徹、電気化学測定法(上)、技報堂出版株式会社、2010,P145

まとめ

[1]からフィックの拡散の第2方程式すなわち拡散方程式はある領域での濃度の変化速度=D×(その領域での濃度の曲率)

つまりdc/dt=D×(d^2c/dx^2) (図で入れる?)

[1]から拡散係数Dはアインシュタインの式より、D=kT/6πηa


aは分子半径

Tは温度

kはボルツマン定数([1]には追記なし)

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