現代の電気化学

2020/05/14
大里京祐

7.1.3 電界効果型トランジスタ

電界効果型トランジスタ(FET)は作動に多数キャリヤーを利用しているので、接合型のバイポーラ型に対してモノポーラトランジスタ(monopolar transistorと も呼ぶ。 FETを大別すると接合ゲート型FET(J-FET)、絶縁ゲート型FET(MOS-FET)に分けられる。いずれも高入力インピーダンスの特徴をいかした利用がなされている。FETの動作原理を接合ゲート型FETを例にとり説明する。図7.5にそのモデル図 を示す。 n型半導体の両端にオーミック接触によりソースとドレーン(drain)を作る。中央部両面にp層を作り、ゲート(gate)を設ける。ここで、図のようにゲートには逆バイアスを印加すると、空間電荷層が広がり、ソース・ドレーン間キャリヤー通路が狭まる。この電流の通路をチャンネル(channel)と呼ぶ、このように、ゲート電圧VGを変えると、ドレーン電圧VDが一定のときドレーン電流I DをV Gにより変調することができる。ここで、V D+V Gがある値以上に なると、チャンネルが消滅し、V Dを増してもI Dは飽和値を示す。これをピンチオフ状態と呼ぶ。図7、6はJ-FETの電流一電圧特性である。FETの遮断周波数はソース・ドレーン間のキャリヤー走行時間で決まる。したがって、高周波型デバイス材料 としては電子の移動度が速いGaAsが有利である。


J-FETはその構造が接合型トランジスタ製造工程に組み込みやすいため、接合トランジスタ(junction transistor)の低インビーダンスを補償する形で用いられる。MOS-FETは、図7、7に示すように絶縁層SiO2(またSi3N4など)をはさんでゲート 電極を設けている。ここでは、P型基板にドナーを強くドープして、導電性の高いn+領域を2箇所作り、ソースとドレーンとする。ソースとドレーン間にバイアスをかけても電流が流れないが、ゲートに正の電圧をかけると、酸化物とp型基板の間のバンドの曲がりが大きくなり、酸化物一半導体界面に伝導電子が発生し、電流が流れるようになる。その結果、酸化物界面はn型と同様に作用する。MOS-FET (metal oxide semiconductor-FET)は接合ゲート型FETと比べると、ゲート入力インピーダンスが高く、作製プロセスが簡単であるため、高密度集積化に適した素子と言える。ゲート電極に正の電圧を与えると負電荷の電子が誘起して、電流が流れるものをnチャンネルMOS-FETと呼ぶ。また、ゲート電圧に負の電圧を印加すると正電荷をもつ正孔が誘起され、それが電流となるものをpチャンネルMOS-FET と呼ぶ。 MOS-FETでは、ゲート部が酸化物となり金属と半導体の間接接触によりできる空間電荷層がソース・ドレーン間の電流を制御する。したがって、動作原理は空間電荷層の誘起方法が異なるだけでJ-FETと同じである。