Fig. 9にポリフッ化ビニリデン(PVDF)のN−メチルピロリドン(NMP)溶液の交流インピーダンスのコールコールプロットを示す. 並列な電気抵抗成分の存在を意味する円弧が現れた. PVDF/NMP溶液には直流が流れるのである.もちろん, 測定される電流は微弱であった.
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Fig. 9 Cole-Cole plot of PVDF/NMP solution and ion exchange water.
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Fig. 10にいくつかの有機溶媒に1500 Vの直流高電圧を印加したのきの電流を示す.また電流と電圧の比,セル定数から求めた抵抗率をTable 1 に示す.PVDF/NMP溶液の抵抗は,LCRメーターで求めた並列抵抗とほぼ一致した.有機溶媒に直流高電圧を印加したとき電気化学セルは発熱した. これは抵抗が溶媒バルク全体にわたっていることを示す. また気泡の発生は見られなかったので,微量に含まれる水分が電流の原因とは考えづらい.
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Fig. 10 Relationships between voltage and current on some organic compounds.
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Table 1 Resistivities of organic compounds.
EG 1.3
GBL 3.0
EG+GBL 0.7
H2O 0.3
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Fig. 12には有機溶媒が電流を流している原因のひとつと考えられる自己解離(Auto Protolysis constant)について示す.これは共有結合がわずかに電離していることを意味している.水は共有結合だがわずかに電離する.水はH3O+( H+と表現する)とOH-に電離する.[H+]と[OH-]の積がイオン積Kw = 10-14である.有機溶媒にも同じことが考えられる.
もうひとつは分子の波動関数の接近によるトンネル電流である.共有結合化合物の液体は,分子と分子が動けるという状態にあっても分子と分子の相互作用が残っている.分子の動ける方向に異方性があれば,液晶状態である.
自己解離によるものなのか,トンネル電流によるものなのかは,それぞれの有機化合物での詳細な議論が待たれるところである.