0001.  アルミニウム集電体上の酸化皮膜は電気を流すか?

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電池研究で無視され続けてきた接触抵抗や導電性高分子間の電子伝導をどう考えるか の単元です。

小単元

概要

Fig. 5に活物質としてコバルトリチウムマンガンリチウム, 集電体に金とアルミニウム使った電極の硝酸リチウム水溶液中でのサイクリクボルタモグラム示す. 活物質コバルトリチウム使った場合,集電体表面酸化皮膜持つアルミニウム,それなりに電流流した.酸化皮膜,すなわちイオン結合している酸化アルミニウムに電子伝導が起きていることが示唆される.活物質マンガンリチウム使った場合,電流ほとんど観察されなかった.酸化皮膜作らない金集電体使った場合には電流が流れていることから,酸化アルミニウム接触している活物質によって,酸化アルミニウムによる接触抵抗が大きく変化していることがわかる. なぜ集電体アルミニウムにすると活物質の種類の影響こうも大きく受けるのであろうか?

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Fig. 5 Voltammograms of each cells using combination of current collectors and active materials.

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Fig. 6 Mechanism of resistivity change of aluminum oxide by active materials.

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酸化アルミニウムは電気流す.もちろん,無条件ではない.リチウムオン次電池の正極集電体に使われるアルミニウム,その表面が常に酸化皮膜で覆われている.ここで言う酸化アルミニウムその酸化皮膜である.その酸化皮膜の厚みはせいぜい数nmと極めて薄い.だからたとえ酸化アルミニウムが数GΩmのような大きな抵抗率だったとしても,その接触抵抗は数Ωm2となる. 酸化アルミニウムは金属ではない. イオン結合結晶である.だから自由電子はいない. しかしアルミニウム表面存在する酸化アルミニウム,イオン結合結晶と言っても酸素欠損型の不定比化合物半導体であると考えられる.熱励起による電子が酸素欠損の電荷補償していて,これがキャリアなってわずかな電子伝導が起きると考えられる.

Fig. 6に活物質の種類によって接触抵抗が変化するメカニズム示す.不定比化合物半導体である酸化アルミニウムマンガンリチウムような表面極性の大きな化合物が付着すると,その表面電荷によってその近傍に空乏層空間電荷形成される.そうすると酸化アルミニウム表面付近のキャリア濃度減少する.仮に数倍程度キャリア濃度が変化したとしても,同じ電流が流れていれば,数倍の電圧降下になる.数倍の電圧降下は電池が生きるか死ぬかと言った違いである.

リチウムイオン次電池の正極集電体の表面に存在している酸化アルミニウムは電気流している.そしてそれは電池の性能左右する大きな要因のひとつである.リチウムイオン次電池の熱損失わずかでも抑え,より高出力化するためには,酸化アルミニウムの電気伝導について議論することはとても重要なことと言えよう.

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