集電体と精密塗布・乾燥技術
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卒業研究(C1-電気化学2004〜)
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小単元
概要
集電体と精密塗布・乾燥技術
電池の内部から外部回路へ電流を取り出す部材を集電体、集電材、集電子などと呼ぶ。一般のリチウムイオン二次電池では電極面積を多くするために電極箔をぐるぐる巻きにしたジェリーロール構造をとるため、集電体を集電箔(ホイル)と呼ぶこともある。一次電池と異なり、二次電池では充電によって電池内部が放電前の状態に戻ることが必要である。したがって集電体も電気伝導性や機械的特性に加えて充電に適した特性を持つ金属が選ばれている。一般的には正極箔には充電時に高い電位でアノード分極されても有機電解液中で不働態化しかつ有機電解液の分解を抑制するアルミニウム、負極箔には充電時に低い電位でカソード分極されてもリチウムと合金化することのない銅が選ばれる。もっともチタン酸リチウムのような高電位負極活物質が採用されれば負極箔にも銅より軽量のアルミニウムが採用される可能性がある。
さてリチウムイオン二次電池の正極箔の集電体として使われるアルミニウム箔の表面には自然酸化皮膜が存在しており、これが空気中でアルミニウム箔が耐食性を有する一因である。さらなる耐食性の向上と表面の機能改善のために積極的にこの酸化皮膜を利用するのに予めアノード酸化を施したアルマイトなどの工業製品がある。これらアルミニウム箔の表面酸化皮膜は空気中など環境中の酸素や水分によって平衡状態にあり、かりにキズがついたとしてもその酸化皮膜は酸素や水分によって自己修復される。ところがリチウムイオン二次電池では負極の動作にリチウムの酸化還元反応が関与するため、電解液にはリチウムと反応しづらい非プロトン性溶媒を使う必要があり、結果としてリチウムイオン二次電池の内部環境において正極箔であるアルミニウム箔に対する溶媒の自己修復機能は期待できない。そればかりか充電時に高い電位でアノード分極されるためアノード溶解を引き起こす可能性がある。そのため一般的なリチウムイオン二次電池では、アルミニウム箔とPF6-やBF4-といったアルミニウムの不働態化を促すアニオンを含む電解液と組み合わせる。
このように正極箔の集電体として使われるアルミニウム箔の表面には不働態皮膜が存在するが、この不働態皮膜は電池活物質と電子の授受は行えない。そこで炭素導電助材が集電箔と活物質の電子輸送の橋渡し役として使われる。アルミニウム箔の表面の不働態皮膜は不定比化合物半導体ともいうべき性質を有し、有機電解液や活物質に対してはほぼ絶縁体として振舞うが、炭素導電助材には電子の授受を行うことができる。そこで実際の電極製造工程では炭素導電助材を正極活物質に混合して分散した合材スラリーを作成し、それをアルミニウム箔に塗布・乾燥して正極箔とする。