第6 章 スキャナー

1. 緒言

電子書籍は本を紙の代わりにパソコンやタブレット、スマートフォン等の電子機器で閲覧できるコンテンツである。コンテンツの内容としては、漫画、雑誌、ビジネス書が多くある。メリットとしては、端末とネットワーク環境さえあればいつでもどこでも本を購入し読める点である。

電子書籍を買えるサイトを多数あり、国内で展開している代表的なものはAmazonのKindle,楽天の楽天kobo電子書籍ストア、凸版印刷グループのBook Liveが挙げられる。ただし、Kindleで買ったものはKindle対応のアプリもしくは端末を、楽天kobo電子書籍ストアで買ったものは対応したアプリもしくは端末を用意しなければならないなど規格の統一は特にされていない。

大学の教科書と大学の電子教材への取組を示す。三角は大学の講義において過半数の講義で教科書は採用されておらず、教科書があっても学生の購入率は低下しているという実態があると述べている6)。玉川大学と紀伊國屋書店は電子書籍版教科書に関するプロジェクトを2014年から開始している 7)

現在の論文の電子公開のかたちを示す。国立国会図書館は、所蔵している博士論文の電子化を行い、インターネット上で公開していて実際に閲覧することが可能である5)。図 1に仁科辰夫氏の博士論文を示した。図 1のように見開きの写真が掲載されている。パソコンとインターネットがあれば閲覧が可能であるが、写真であるため論文内の検索はできない。

http://dl.ndl.go.jp/view/jpegOutput?itemId=info%3Andljp%2Fpid%2F3074686&contentNo=2&outputScale=1

1 仁科辰夫氏の博士論文

学位論文の電子化公開に関して東京大学は、紙媒体のため、直接訪問して閲覧するか、図書館を通じて部分的にコピーを入手するしか利用の方法がなく、非常に不便な状態にある。学位論文を電子化して「東京大学学術機関リポジトリ」(※)インターネットを経由して世界中の研究者の目に直接触れることとなり、研究成果を幅広く発信することができると述べている。実際に東京大学学術機関リポジトリのWebページ上で卒業論文、修士論文、博士論文をpdfで公開している 8)。もっとも古い博士論文で1971年のものであった。

※東京大学学術機関リポジトリは東京大学が行っている、学内で生み出される世界水準にある研究成果をインターネット経由で国際的に発信するシステムである。

電子ジャーナルの問題点について示す。Science Directを例として説明していく。Science Directはエルゼビア社が提供する世界最大のフルテキストデータベースである。エルゼビアが発行する2,500誌以上の科学・技術・医学・社会科学分野の電子ジャーナルに加え、20,000タイトル以上の電子ブックも搭載している。フルテキストの数は1,200万件を超えている1) 。このサービスは山形大学でも利用しているが、問題なっているのは高い利用料である。文部科学省の調達情報によると、山形大学は平成25年5月1日にScience Directの利用一式として52,732,494円、平成26年5月21年にScience Directの利用一式として54,215,627円を落札している 2)。年で3%程上昇していた。山形大学では使用者比率と利用比率から学部ごとに負担割合が決まっており、工学部の利用比率は50%を超えており、工学部の負担額を上げる一因になっている4)。また、吉田は東邦大学のScience Direct利用料としての支払額が2002年から2007年の間に年々支払額が上昇し最終的には2002年度の価格の5.33倍になったと述べている3)

東京大学学術機関リポジトリやScience DirectにおいてどちらもPDFでの公開を行っている。PDFの最大の利点はレイアウトや書式を環境が変わっても忠実に再現できる点である。また、PDFの設定によっては文書内検索も可能である。ただし、閲覧の際は専用のPDFリーダーが必要になる点や、レイアウトが崩れないからこそ電子ファイルであるのにパソコンやタブレットでは見づらい等の短所が見られる。

本章では、市販の機械を用いた書籍の電子化と論文等の公開形式について議論し、大学においての論文や教材の保存と公開について提案する。

2. 実験方法

2.1 実験準備

自動給紙方式スキャナーであるScan Snap S1500(富士通製、以下S1500)とオーバーヘッド読み取り式スキャナーScan Snap SV600(富士通製、以下スキャナーB)を用いた。

2.2 ソフトウェアの設定

図 1にScan Snapのアイコンを示した。Scan Snapを起動するとタスクバーに図 1中の○で囲われたアイコンが現れた。このアイコンを右クリックした。

2 Scan Snapのアイコン

 右クリックすると図 2に示した右クリックメニューがあらわれた。ここで「Scanボタンの設定」をクリックした。

3 右クリックメニュー

クリック後、Scan Snapの設定ダイアログがあらわれたので、「カスタマイズ」をクリックし、詳細をクリックした。図 3の画面になった。各タブを説明する。

4 Scan Snapの設定画面

「保存先」ではスキャンしたファイルの保存先を選択できる。「読み取りモード」では画質の選択、カラーモードの選択、読み取り面の選択ができる。「ファイル形式」ではスキャンした画像をPDFかJPEGかを選択できる。また、PDFの場合のみスキャンしたものを文字認識するかどうか選択できる。「原稿」現行サイズの選択が行える、通常サイズ自動字検出にしている。ファイルサイズは、ファイルの圧縮率等を変えられる。

2.3 Scan Snapの使い方

Scan Snap S1500のスキャン方法を示す。給紙カバーを開けて図 4の右の図にした。Scanボタンが光っていることを確認し、読み取る面を下にしてScanボタンをクリックした。スキャンが開始し原稿を読み始めた。

5 給紙カバーオープン

製本された本をスキャンする場合スキャナーAの場合、本を裁断してスキャンする必要があるが、スキャナーBは本を裁断しなくてもスキャンでき、パソコン上で歪みを訂正することができる。

2.4 過去の卒業論文のPDF化(紙から電子化)

仁科・立花・伊藤研究室にあった過去の卒業論文はS1500を使いスキャンを行った。卒業論文は紐で綴じられており、解体と再現が簡単であるためS1500を用いた。スキャンのファイル形式はPDFで行い日本語検索を可能にはしなかった。

2.5 書籍のデータ化(紙の本から電子化)

 著作権が立花和宏准教授にある、現代の電気化学(原著 小沢先生、2014年度では山形大学工学部物質化学工学科の講義である、電気化学と無機工業化学で採用された)をスキャナーに搭載されたOptical Character Reader(光学式文字読み取り、以下OCR)機能を用いてスキャンし、PDF化を行った。作成したPDFファイルからテキスト情報をコピーできるか試した。ソフトウェアの設定の中の「ファイル形式」の設定は「ファイル形式の選択」は「PDF(*.pdf)」を選択し、「検索可能なPDFにします」にチェックを入れ、「対象言語」は日本語、「対象ページ」は全ページを選択した。

3. 結果

3.1 卒業論文のPDF化

表 1にPDF化した卒業論文のファイル一覧を示した。卒業論文の98冊PDF化を行った。読み取った卒業論文のフルパスは

\\yzdn\dfs\share1\C1-MRI\anytime\過去の卒業論文

に卒業年ごとにフォルダを作成し、分けて保存した。PDF化を行う際に文字認識を行おうとしたが、1冊に対してスキャン時間+10分以上かかったため文字認識を行うことを止めた。

 作成したPDFファイルは文書の検索は行えなかった。41枚の紙をスキャンするのに、4分程度時間を要した。古い論文ほど紙がくっついていたので紙の重なりが発生しやすく、

通常時よりも多くの時間を要した。

1 PDF化した卒業論文のファイル一覧

氏名

卒業年

卒業論文ファイル名

斉藤 和夫

1954

斉藤和夫_ホルモグアナミン製造について.pdf

高橋 敏夫

1956

高橋敏夫_ヂメチルシアナミドの合成.pdf

佐藤弘行

1957

佐藤弘行_塩化チアヌルの合成.pdf

花輪 健

1958

花輪健_石灰窒素より青化ソーダ生成に関する不純物(特に鉄)の影響.pdf

千葉保昌

1960

千葉保昌_石灰窒素より青化物の製造.pdf

鈴木実

1960

鈴木実_天然ガスからアセチレン水素等の製造.pdf

三部明

1967

三部明_銅の電解研磨に関する研究-銅のリン酸溶液中における陽極的挙動-.pdf

矢作良平

1967

矢作良平_ホルモアグナミンの合成.pdf

越後幸伸

1968

越後幸伸_陽極反応機構に関する研究ヨードホルムの電解合成.pdf

佐藤芳樹

1968

佐藤芳樹_石灰窒素誘導体の合成.pdf

小田島次勝

1968

小田島次勝_二酸化マンガンの電解析出機構について.pdf

斎藤力

1968

斉藤力_マンガンの.pdf

鈴木武仁

1968

鈴木武仁_シュウ酸マンガン・二水和物の熱分解.pdf

鈴木芳博

1968

鈴木芳博_陽極反応機構に関する研究陽極材料について.pdf

高野文隆

1969

高野文隆_DeaconProcessの一改良法.pdf

森憲一

1969

森憲一_二酸化マンガン電析時におけるインピーダンスの測定.pdf

中敦士

1969

中敦士_ジシアンジアマイドの加水分解.pdf

目黒 一三

1969

目黒一三_二酸化マンガンの電解析出機構.pdf

鈴木 信次

1969

鈴木信次_ジシアンジマイドの加水分解.pdf

中園俊祐

1995

中園俊祐_アルカリ水溶液中における二酸化マンガンの充放電挙動と測定システムの改良.pdf

大沼 源一郎

2000

大沼源一郎_クエン酸錯体法によるLiNiO2の合成法確立.pdf

田中 良司

2000

田中良司_二酸化マンガンの化学分析と標準化.pdf

阿曽 大輔

2004

阿曽大輔_廃棄された自動車用鉛電池の再生とテスト方法.pdf

伊藤 晋

2004

伊藤晋_ニオブアノード酸化皮膜の絶縁特性に及ぼす熱処理雰囲気の影響.pdf

遠藤 麻未

2004

遠藤麻未_リチウムイオン二次電池正極集電体/合材密着性工場のための蓄電ゴムの開発.pdf

田中 良樹

2004

田中良樹_Nbアノード酸化皮膜を用いた固体電解コンデンサの性能向上.pdf

加藤正吾

2005

加藤正悟_鉛蓄電池の充放電に伴う負極劣化のその場観察法による可視化.pdf

久保篤嗣

2005

久保篤嗣_リチウムイオン二次電池の有機電解液分解に伴う劣化原因の解明.pdf

及川文成

2005

及川文成_二酸化マンガンを用いたハイブリットキャパシタの特性改善.pdf

原 啓

2005

原哲_クエン酸錯体法によって合成したLiMn2O4の形状制御と電池特性の改善.pdf

古川義章

2005

古川義章_電着による銅細線への黒色絶縁膜形成.pdf

小林 郁衣

2005

小林郁衣_鉛蓄電池負極サルフェーションと電池構成部材の純度.pdf

城野雅明

2005

城野雅明_リチウムイオン二次電池の負極材料として用いられるグラファイトの評価.pdf

赤峰 広規

2005

赤峰広規_ニオブアノード酸化皮膜の漏れ電流に及ぼす導電性高分子の接触効果.pdf

大木 信典

2005

大木信典_導電助材および電池かつ物質をゴム支持体に均一に混練したリチウムイオン二次電池の正極特性の評価.pdf

中川 健一

2005

中川健一_活性化剤による鉛電池の再生と陽極での挙動.pdf

仲宗根亮

2005

仲宗根亮_大学法人化に伴う関連法規にたいおうした化学物質管理・公開システム開発.pdf

田中 智

2005

田中智_リチウムイオン二次電池用正極合材のバインダーについて.pdf

阿部智幸

2006

阿部智幸_リチウムイオン二次電池正極活物質へのバインダー塗布による影響.pdf

伊藤裕

2006

伊藤裕_ゴム支持体に炭素材料を混練したスーパーキャパシタの電極特性の評価.pdf

舘謙太

2006

舘健太_デジタル灰スコープによる鉛蓄電池の充放電に伴う負極劣化の可視化.pdf

金子英樹

2006

金子英樹_水分濃度を変えたLilO4溶液中におけるバルブメタル微笑電極の腐食.pdf

根本直樹

2006

根本直樹_コッククロフトウォルトン回路を用いた充電回路の鉛蓄電池への適用.pdf

住田奈緒子

2006

住田奈緒子_表面処理を施したアルミニウムとバインダー分散液との接触核が内部抵抗に及ぼす影響.pdf

小原 大佑

2006

小原大佑_リチウムイオン二次電池正極における炭素/アルミニウム界面の接触抵抗を提言させるバインダーの塗布条件と乾燥温度.pdf

大津 拓也

2006

大津拓也_リチウムイオン二次電池用有機電解液中の水分濃度による正極合材がでっ職したAl集電体上の副反応.pdf

田口里子

2006

田口里子_アルミニウムを集電体とするコンポジット電極の内部抵抗と充放電特性に対するバインダーの種類とプレス圧効果.pdf

風間晃

2006

風間晃_親水性導電性高分子を使ったニオブコンデンサへの応用.pdf

安藤 宗明

2007

安藤宗明_新品鉛電池の充放電挙動と活性化剤の効果.pdf

久保芳子

2007

久保芳子_鉛電池電極の酸化還元挙動に及ぼす添加剤の影響.pdf

後藤 善仁

2007

後藤善仁_有機電解液を用いたニオブ材料の電解エッチング条件の検討.pdf

坂井 陽介

2007

坂井陽介_鉛蓄電池充電回路におけるコッククロフトウォルトン回路の応用.pdf

西川 幸秀

2007

西川幸秀_電気二重層キャパシタの電解液の違いによる接触抵抗の非可逆性発現機構.pdf

齋藤 歩美

2007

斉藤歩美_ESRによる、ニオブアノード酸化皮膜欠陥部の定量分析.pdf

石神大介

2007

石神大介_高分子ゲル電解質を用いた電気化学キャパシタの特性改善.pdf

大成龍彦

2007

大成龍彦_中国製及び日本製鉛蓄電池の充放電特性に及ぼす活性化剤の効果.pdf

長瀬 智哉

2007

長瀬智哉_バインダー乾燥家庭における電極表面の可視化.pdf

尾形 裕隆

2007

尾形裕隆_車椅子用電池の充放電特性と再生に関する研究.pdf

服部暢介

2007

服部暢介_硫酸鉛生成における添加剤の影響と形態観察.pdf

吉田 麻衣子

2008

吉田麻衣子_チタン酸リチウム負極活物質をゴム支持体に混練したリチウムイオン二次電池型蓄電ゴムの検討.pdf

高塚 知行

2008

高塚知行_ESRによるNb2O5酸素欠損の評価.pdf

今野 優輝

2008

今野優輝_粘着テープを用いた正極合材と集電体との接着強度の数値化.pdf

小森 康孝

2008

小森康孝_デジタルハイスコープを用いた鉛蓄電池負極の硫酸鉛結晶発生の可視化.pdf

大須賀 洸志

2008

大須賀洸志_アルミニウム不働態皮膜生成時における電流について.pdf

渡邉 貴太

2008

渡辺貴太_クエン酸錯体法を用いたLiFePO4の合成における焼成条件の検討.pdf

粕谷 涼

2008

粕谷涼_リチウムイオン二次電池の正極合材の構造と応答速度の関係.pdf

服部 久子

2008

服部久子_アルミニウムの腐食に対する水分濃度とクロム被覆の影響.pdf

平山 従仕

2008

平山従士_アルミニウムの予備アノード酸化による有機電解液中でのブレークダウン電位の制御.pdf

柳沼 雅章

2008

柳沼雅章_リチウムイオン二次電池正極用バインダ合材中の水分とアルミニウム集電体の反応.pdf

楡木 崇仁

2008

楡木崇仁_液晶材料の漏れ電流とインピーダンス測定条件の最適化.pdf

遠藤 淳一

2009

遠藤淳一_アルミニウムの表面酸化皮膜が有機電解液中でのアノード酸化に及ぼす効果.pdf

玉野 佑季

2009

玉野佑季_鉛蓄電池電解液への有機ゲルマニウムの添加によるPBO2正極の酸素過電圧上昇について.pdf

荒井 俊彰

2009

荒井俊彰_リチウムイオン二次電池用バインダによる炭素導電パス阻害の評価.pdf

佐藤 琢哉

2009

佐藤琢哉_アノード酸化がEDLCモデル電極の内部抵抗に及ぼす影響.pdf

鹿又 憲紀

2009

鹿又憲紀_有機不純物が液晶材料と配向膜界面につくる面欠陥によって起こる漏れ電流.pdf

瀧本 亮

2009

瀧本亮_リチウムイオン二次電池型蓄電製性ゴムの実用化に向けたイオン液体の可能性.pdf

藤田 圭介

2009

藤田圭介_液晶ディスプレイ材料の分子は意向に及ぼす極性溶媒の添加効果.pdf

畠山 裕起也

2009

畠山裕起也_交流インピーダンス法を用いたバインダのアセチレンブラック被覆性評価.pdf

八重樫 起郭

2009

八重樫起郭_アルミニウムのアノード酸化に隔離紙接触が及ぼす効果.pdf

鈴木 美恵

2009

鈴木美恵_鋳鉄の凝固解析および組織観察による被削性評価.pdf

佐藤 史人

2010

佐藤史人_リチウムイオン二次電池合材スラリー中炭素粒子分散材に関する研究.pdf

森田 茉季

2010

森田茉季_液晶場をプローブとしたリチウムイオン二次電池負極カーボン材料選びの最適条件の解析.pdf

菅野 拓

2010

菅野拓_電池負極活物質表面モルフォロジーに及ぼす有機ポリマー添加剤の効果.pdf

川瀬 巧雄

2010

川瀬功雄_液晶場をプローブとしたリチウムイオン二次電池正極活物質及び類似酸化物の表面特性評価.pdf

中井 大輔

2010

中井大輔_分散系バインダ中の界面活性剤が有機エネルギーデバイスにおける集電体と溶媒の界面に及ぼす効果.pdf

武田 浩幸

2010

武田浩幸_交流インピーダンス法によるリチウムイオン二次電池用有機溶媒の評価.pdf

マフザ シャハルディン

2011

マフザシャハルディン_液晶場をプローブとして無機材料評価.pdf

亀谷 宗寿

2011

亀谷宗寿_液晶材料を用いた電池用バインダー樹脂選択法.pdf

山本 俊

2011

山本俊_カーボンブラックの種類がEDLCモデルに及ぼす影響.pdf

清水 愛美

2011

清水愛美_Al集電体への炭素材料密着性に及ぼす表面処理の効果.pdf

村田 亮

2011

村田亮_炭素分散液晶セルによる炭素材料の電気的性質の評価.pdf

及川 俊也

2012

及川俊也_過渡電流観察によるリチウム電池炭素導電助材と集電体の微小剥離の解析.pdf

相田 桃那

2012

相田桃那_導電助材の混練による正極活物質の結晶構造変化と電池性能.pdf

長瀬 将太

2012

長瀬将太_アルミニウム集電体を洗浄する溶剤の種類とリチウムイオン二次電池の内部抵抗の関係.pdf

長谷川 拓哉

2012

長谷川拓哉_過充電時に正極内部に生じるバインダー中のボイドとクラック.pdf

本田 千秋

2012

本田千秋_アルミニウム集電体からの炭素導伝助材剥離現象に関わるバインダーの種類.pdf

齋藤 侑紀

2012

齋藤侑紀_炭素分散液晶セルの配向膜の依存性.pdf

3.2 書籍の電子化

 S1500のOCR化を用いて、PDFファイルに文字認識することが可能になった。

 PDF内の文章をコピー&ペーストして文書のテキスト化を行ったところ、日本語については正しく表示できた。その一方で英語や数式に関しては正しく認識できなかった。特に現代の電気化学においては、化学式、数式が多くあるためPDFファイルを元に文書を作成する際には単にコピー&ペーストだけの完成は難しかった。

4. 考察

はじめに3.1と3.2でOCRを行ったり行っていなかったりするが、これはスキャンの際に使用したPCの差である。3.1ではWindows XP時代のノートPCを使ったため時間がかかったが、3.2では格段にスペックの高いワークステーションを使用したためOCR処理が高速であったと考える。スキャンの際にはマシンパワーもある程度必要になるため、その点は留意した方が良いと考えられる。

PDF化においてはもう1度印刷しなおすには向いている。また言語の設定よるがOCRの精度は高いので参考程度に使う分には差し支えないと考えられる。ただし、再利用はしにくい。特に学術論文、学位論文は再利用される可能性は高くPDFのみの保存だと紙の保存とあまり変わらないように感じられる。また本章1項で述べたようにパソコンやタブレットで見づらい点は電子化の足を引っ張っていると考えられる。

上記のことを踏まえてスキャナーを使った電子化、つまりPDF化や文書化については労力の割にはあまり見合ってないと考えられる。ただし、過去の論文を紙の劣化等から守り永続的な保存においてはスキャナーを使ってのPDF化適している点は忘れてはならない。

これからの保存方法について考察する。書籍や論文を構成しているのは、たった2つである。文章とそれを補助する画である。そして、パソコンやタブレットにアプリケーションを追加せずに標準機能だけで表示できればなお良いのである。そしてインターネット上で公開するのであればWebブラウザで表示できればよいと考えられる。なおWebブラウザに表示するためのHtmlファイルの作成や再利用も容易である。またOSによる依存もなく現在の電子書籍と同様インターネットがつながっていればいつでも見られる環境が整う。

現在の情報通信技術を踏まえて、大学が有している研究という名の資産を無下に非公開するよりも電子化し公開することは2つの点で有意義だと考えられる。これは大学全体で論文の電子化を行うことで大手ジャーナルのようなデータベースを作成することも可能である。これを行うことによって大学の研究の宣伝にもつながると考えられる。またHtml化による効果は大手検索サイトがページ内まで検索をかけるため閲覧数がPDF時よりも高くなることも考えられる。

○章での重要文化財の展示品リストの中には卒業論文が少なからずあった。これらの資産を失う前に対策をうち大学に役立てるのは大学にとって急務だと考える。

5. 結言

スキャナーによる紙になっている卒業論文や書籍のPDF化は永続的な保存については有効である。ただし、再利用が難しく、絶版本等の紙でしかないものの電子書籍化には難しい。

今後、電子化に関してはPDFのみならず、Htmlもしくはそれに準ずるものが有効である。

6. 参考文献

1) http://www.elsevier.com/jp/online-tools/sciencedirect

2) 文部科学省の調達情報の落札公示より

3) 吉田杏子,東邦大学における外国雑誌価格高騰への対応,薬学図書館,57(1),25-30(2012).

4) 山形大学工学部図書館の電子ジャーナルに関するアンケート調査より

5) http://dl.ndl.go.jp/#etd

6) 三角太郎,大学学習資源コンソーシアム学習・教育のための利用環境整備,情報管理,57(10),725(2015).

7) 紀伊國屋プレスリリース, https://www.kinokuniya.co.jp/c/company/pressrelease/20140114120320.html

8) http://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/dspace/handle/2261/104

9) 小池 利明,林 純一, 電子出版にはWebブラウザだけあればいい, 情報知識学会誌, 21(4), 441(2011).