56331 修士論文
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小林卓巨
東日本大震災被災後の保存修理工事に向けた旧米沢高等工業学校本館展示品のデータベース化
全ての工業製品は文化財になりえる。使命を終えた工業製品を個人が保存すれば場所や維持費で個人が損をし、捨てれば文化財は失われ社会全体が損をする。このような個人と全体の相反するジレンマに直面したとき、法律が生まれ行政が求められ、博物館ができ学校ができる。1910年に設立されて以来、百余年の歴史を持つ山形大学工学部には重要文化財に指定された旧米沢高等工業学校本館の校舎があり、その中には多くの使命を終えた工業製品が文化財として展示されていた。しかし2011年の東日本大震災で被災した校舎を補修工事するにあたり、すでに法人化され独立採算を求められていた山形大学にとってその展示品の維持管理は大きな課題であった。筆者らは時代とともに発展したIT技術を活用してデータベースシステムを構築し、山形大学工学部に在席する学生が自らの学びのために現場で文化財保護活動に取り組むことで、短期間で展示品のデータベース化と管理台帳の作成を実現した。
MC09 エネルギーデバイスに使われる非導電性材料の構造がその電気的性能に与える影響
MC09 エネルギーデバイスに使われる非導電性材料の構造がその電気的性能に与える影響
仁科・立花・伊藤研究室
見かけの比誘電率の大きい活物質では反応速度は速いが、集電体との接触抵抗が大きくなった。表1に本論文の第四章で示す結果の概要データを示す。比誘電率の大きいLiMn2O4Iの比誘電率は117であった。ボルタモグラムの電池式AuLiMn2O4LiPF6EC+DECPt vs Agである。比誘電率の大きいLiMn2O4Iを使用した電池のボルタモグラムではマンガン酸リチウムの酸化還元に伴う2つの電流ピークが観察された。掃引速度を10mVsecから50mVsec,100mVsecに速くしてもマンガン酸リチウムの酸化還元に伴う2つの電流ピークがシャープに観察された。標準的なLiMn2O4?の比誘電率は6.3~14であった。マンガンリチウムのサンプルによって見かけの比誘電率が異なった。標準的な比誘電率のLiMn2O4?を使用した電池のボルタモグラムではマンガン酸リチウムの酸化還元に伴う2つの電流ピーク観察はされなかった。比誘電率の大きいLiMn2O4IとLiMn2O4?のXRDは3強線や強度比に大きな差はなかった。比誘電率の大きいLiMn2O4IのATR法で測定したIRスペクトルは1300〜1400cm-1付近に吸収がみられた。標準的な比誘電率のLiMn2O4?のATR法で測定したIRスペクトルは2000cm-1付近に吸収がみられた。マンガン酸リチウム表面にいる有機物が異なった。比誘電率の大きかったLiMn2O4IのESR信号のg値は2.03であった。スピン濃度は、2.0×1017spinsgであった。標準的なLiMn2O4?のESR信号のg値は2.09であった。は1015spinsg以下であった。g値よりLiMn2O4Iのスピン濃度はMnイオンの濃度に由来するもので、Mnイオンが観察されるということは表面にあるマンガンの欠陥が多いことが示唆された。XRD,IR,ESRの結果より、このマンガン酸リチウムで観察される分極、比誘電率の大きさはバルクではなく活物質表面の分極が影響している。そしての表面の欠陥や有機物がマンガン酸リチウムの反応をさせやすくしている。
ダイエット版
MC09 エネルギーデバイスに使われる非導電性材料の構造がその電気的性能に与える影響
仁科・立花・伊藤研究室
見かけの比誘電率の大きい活物質では反応速度は速いが、集電体との接触抵抗が大きくなった。表1に本論文の第四章で示す結果の概要データの抜粋を示す。比誘電率が117と大きいLiMn2O4Iは、試験電池を作成して電位掃引するとマンガン酸リチウムの酸化還元に伴う2つの電流ピークがシャープに観察された。しかし比誘電率が標準的な6程度のマンガン酸リチウムを試験電池に組んで同じ電位掃引すると酸化還元に伴う2つの電流ピーク観察はされなかった。比誘電率の大きいLiMn2O4IのIRスペクトルには特徴的な1300〜1400cm-1付近の吸収がみられ、ESRで測定されたスピン濃度も、2.0×1017spinsgと大きかった。XRDではほどんど違いが見られなかったことから、これらの特徴は表面の欠陥や有機物の状態を示しており、それらがマンガン酸リチウムの反応速度を大きくしていると考えられる。
伊藤知之 公聴会要旨
伊藤知之 論文要旨
【論文内容要旨】
論文内容要旨
平成 25年度入学 博士前期課程
専攻名 物質化学工学専攻
学生番号13520304
氏 名 伊藤知之 ○印
論文題目 エネルギーデバイスに使われる非導電性材料の構造が
その電気的性能に与える影響
第一章では緒言、第二章では実験方法について記載した。
第三章では有機半導体の簡便迅速評価について述べた。有機トランジスタ用の有機半導体は数多く合成されている。キャリア移動度を測定するには実際に有機トランジスタを作製しなければならない。しかしながら模擬デバイスを使った評価ではその作成に大掛かりな装置が必要であり、また時間もかかり、評価コストが大きい。さらにサンプルとして模擬デバイス作成に必要な分量が多く微量評価ができなく、合成された有機半導体の移動度を微量かつ簡便・迅速に評価する方法が見当たらないという課題があった。第3章ではコンダクトメトリーにより有機化合物の溶液の導電率が有機半導体の評価に使えるかどうか調べることを目的とした。結論として有機化合物の半導体の特性は、有機化合物の溶液の導電率を測定することにより、微量の試料を迅速かつ容易に評価することが可能である。有機化合物の溶液の導電率は、分子の実際の半導体特性に関連している。スタッキングの感度は、デバイスの移動度および有機化合物の溶液の導電率と比較して評価することができた。
第四章では活物質の見かけの比誘電率と電池の性能の関係について述べた。活物質粉体のインピーダンス測定をおこない、マンガン酸リチウムはサンプルによって見かけの比誘電率が約100倍異なった。IR、ESR、XRDのなどの分析を行いこの見かけの比誘電率の違いは活物質の表面が影響していることを明らかにした。見かけの比誘電率大きいマンガン酸リチウムは反応速度が速く高速充放電可能であるが、合材と集電体との接触抵抗は大きくなった。
第五章では電池合材スラリーが同一の組成であるにもかかわらずスラリー調整条件によっての合材と集電体との接触抵抗は約200倍も異なった。スラリーが同一組成でも炭素材料、特にカーボンナノチューブの解砕が不十分だと活物質が炭素材料で覆われず、活物質が集電体皮膜に直接接触してしまうため接触抵抗が増大してしまう。カーボンナノチューブでは特に分散方法が顕著にAl集電体と合材の接触抵抗に影響することを明らかにした。
第六章では鉄粒子が異物として混入いるカーボンナノチューブを、正極に使用した際、充電時に正極でその鉄粒子がイオンとして電解液中に溶解し、そのイオンが要因で鉄由来の析出物であるリチウムの複合化合物が負極側で析出し化学短絡の要因になることを明らかにした。また電池に使用するセパレータは電気を流さない非導電性材料にもかかわらず、セパレータの種類によって鉄由来の析出物の析出量、大きさ、析出する場所が異なった。
(1,200字程度)