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🌡️ 📆 令和6年3月29日

10. 有機材料~リチウム電池の電解液~

山形大学  理工学研究科(工学系)  物質化学工学専攻  🔋 C1 立花和宏


イオンの移動

  1  イオンの移動
形態 説明 流動
対流 重力・動力(撹拌)
🖱 泳動 電位勾配/ クーロン力/導電率 位置エネルギーを最小に 慣性支配
🖱 拡散 濃度勾配/拡散係数 エントロピーを最大に 拡散方程式 拡散過電圧 粘性支配

拡散と対流は、イオン移動だけでなく物質移動でも起こります。拡散はイオン移動だけでなく 熱移動でも起こります。


電位プロファイルと導電率

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電位プロファイルと導電率
©K.Tachibana

導電率は、 物性値です。 ベクトル量なので、導電異方性があれば、方向依存性があります。

導電率は、電流密度を電界の強さの比です。 電界の強さは電位勾配であり、電位勾配を見るには位置に対して電位を示した電位プロファイルが便利です。

また 導電率は、 移動度 と電荷密度の積です。 移動度は粘度に反比例し、 電荷密度は、イオンの濃度に比例します。


  2 導電率 の大きな 電解液
材料 導電率 / S/m 抵抗率 / Ω・m
1M KCl aq 11.00 0.09
0.1M NaOH aq 1 ) 2.20 0.45
1M LiPF6/PC+DME(1:1mol) 2 ) 1.59 0.63
35wt%食塩水( 🏞 海水) 3 ) 4.00 0.25
水道水 4 ) 0.01 100.00

電解液( 電解質) はイオン電導です。自由電子による 金属の電子伝導に較べて導電率は8桁ほど小さくなります。 電池の内部抵抗を減らすには、電極面積を増やし、電極間距離を縮め、導電率の高い電解液を使います。


リチウム電池の電解液はフルーツの香り

1950年代、石油化学工業が発達しました。 そして1958年、有機電解液が発明されました。

高校で習った通り、極性物質は極性溶媒によく溶けて、非極性物質は非極性溶媒によく溶けます。 電池の電解液は電子を通さず、電気を流す都合、イオンが溶けていることが求められます。 よって極性物質の代表格である塩が溶けていなくてはなりません。 したがって、溶媒は極性溶媒ということになります。 しかしながら、リチウムは水と反応しますから、有機溶媒でなくてはなりません。 しかも、水というよりプロトンと反応しますから、非プロトン性溶媒でなくてはなりません。 極性をもって非プロトン性となると、やはりエステルですよね。 高校で習った通り、エステルはフルーツの香りがします。 だからリチウム電池の電解液はフルーツの香りがするのです。


非プロトン性溶媒


極性と溶解度

電解液の導電率が大きいほど、 電池の内部抵抗 は下がる。 導電率は電離した電解質の濃度と電解液の粘度に支配される。 イオン半径の大きなアニオンは電離しやすい。 誘電率の大きな溶媒は電解質をよく溶かす。 濃度が大きく、誘電率の大きな電解液は粘度も増すので、電解液はそれらのトレードオフとなる。

リチウムイオン二次電池には、非水溶媒からなる有機電解液が使われている。非水溶媒は、水より誘電率が低い。よって非水溶媒は、水より塩を溶解しにくい。ゆえに、有機電解液は、水溶液電解液と較べて導電率が小さい。


粘性と極性-混合溶媒-


添加剤

野村正勝・鈴鹿輝男, 最新工業化学―持続的社会に向けて― ,講談社サイエンティフィク

電解液。 電解液の中の電気の担い手はイオンと呼ばれる荷電粒子だ。 イオンの重さは一番軽い水素イオンでも電子の重さの1800倍。 この重さの違いはゾウとモルモットの体重差に匹敵する。 だから、電池から電流を取り出せているとき、電気の重たさは気にせずともよい。 電気の動く向きを変えようとしたときに、電気の重たさからくるリアクタンスをインダクタンスと言い、 電気のたまりからくるリアクタンスをキャパシタンスと言う。 電池から電流を取り出せているときは、電気の重たさは気にせずともよいのだから、リアクタンスはキャパシタンスだけで表現すればよい。 すなわちX=1/wC。


電解液とSEI

https://engineer-education.com/lithium-ion-battery06_electrolyte-lipf6-ec/

次回

高分子材料 ~リチウム電池のバインダーやセパレータの働き~ http://c1.yz.yamagata-u.ac.jp/Education/Energy.html

参考文献


エネルギー化学特論
✏ 平常演習
✏ 課外報告書 Web Class


QRコード
https://edu.yz.yamagata-u.ac.jp/public/56307/56307_10.asp

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