ぼくらが生きていく上で欠かせない 空気と 水。 産業革命 の立役者、 蒸気機関 だって水がなければ動かないし、そもそも空気がなければ 石炭 が燃やせない。 日本の農業の起源である稲作だって、まさに水が命である。
19世紀の産業革命で 人口が急激に増加、食料危機に見舞われた。 20世紀までの窒素肥料は、 硝酸ナトリウム(チリ硝石)が主体だった。 しかし、「このような鉱石に依存していては急増する人口を養えない、空中窒素を固定する技術を開発する必要がある」と クルックス が主張した。
日本肥料アンモニア協会こうしてそれまで混ぜるや温めるぐらいしかなかった化学反応に「加圧する」という 単位操作が加わりました。 液体と気体をあわせて流体と呼びます。特に臨界点を超えた状態の流体を、 超臨界流体と言います。 流体をターゲットにした高圧化学の始まりです。 ハーバーもボッシュは、その高圧化学でノーベル賞を受賞した。
キューティーハニー(©1973)永井豪,東映 第一話:0950ごろに空中元素固定装置について
アンモニア は、鉄触媒を使って窒素と水素を直接反応させて製造します(ハーバー・ボッシュ法)。 水素と空気を混ぜたって何も起こらないだろうとおもいきや高温・高圧の釜に放り込む発想がすごい。 しかもちょこっと錆びた鉄の釜を使って反応効率が向上するところを発見するなんざ、ハーバーもボッシュもはんぱないアブナイおっさんではないでしょうか。
「おなかが空いちゃはじまらない。だから農業に必要な肥料を量産することは大事なことだった」
「肥料の基本は、植物の生育に欠かせない窒素、リン、カリウム」
「ところが空気の80%も占める窒素だけど、水に溶ける肥料にするとなるとまさに煮ても焼いてもどうしようもない」
「そいつをとことん高圧にしてアンモニアの合成に成功したのがハーバーさんとボッシュさんだ」
「空中窒素固定法として知られているね」
「
最新工業化学
のp.15にアンモニアの製造方法が書いてある。
」
「ちなみに昭和の漫画家永井豪氏は
空中元素固定装置
とやらをマンガに登場させている」
「たしかに窒素のほかに酸素や水を使えばたいていの合成繊維ができるはずだから、自在にコスプレできるはずだ」
「色気たっぷりのコメディにこんなものを登場させるなんてよく勉強してたんだね」
「キューティーハニーでは変身メカニズムの説明があったけど、セーラームーンではなかったね」
「反応釜の画像を検索してみよう。
ごついよねえ・・・高圧と高温の耐えられる容器こそ化学工業の発展に必要なものだったんだ」
「もちろんその容器のルーツは産業革命で活躍した蒸気機関にも使われた
ボイラー
」
ボンベの上に、バルブ(弁)がついています。 ボンベの残量をチェックする一次側圧力計があり、その下にレギュレータがついています。
ボンベは、 業種によってタンクやシリンダーと呼ばれることもあります。 英語での呼び方シリンダーは、産業革命の蒸気機関から由来していることがわかりますね。
圧力計。 高圧でも外れないようネジが切ってあります。
1成分系では、相律においてn=1であるから、F=3-pで、自由度の最大値は2となります。
F=2のときに変えられるのは、温度と圧力です。
よって、1成分系では、
温度と圧力によって、物質が固体、液体、気体、超臨界流体のいずれの
状態を示した図を
2成分系では、自由度の最大値は3となります。鉄ー炭素系平衡状態図などは、よく使われます。
高圧ガスの分類 | ガスの名称 | 性質 |
原料
/製法 |
🚂
製品
/用途 |
---|---|---|---|---|
◇ 酸素ガス | 酸素 | 🏞 空気 | 製鉄 | |
◇ 水素ガス | 水素 | 燃 | LNG | |
◇ 液化炭酸ガス | 二酸化炭素 | 消火 | ||
◇ 液化アンモニアガス | アンモニア | 燃 毒 | 🏞 空気 | |
◇ 液化塩素ガス | 塩素 | 毒 | 海水 /電解 | |
アセチレンガス | アセチレン | 燃 | 溶接 | |
可燃性ガス | プロパン | 燃 | 石油 | 🚂 燃料 |
可燃性・毒性ガス | 可燃性・毒性ガス | 燃 毒 | ||
毒性ガス | 毒性ガス | 毒 | ||
その他のガス | アルゴン |
ボンベの 色 や文字の 色 は、高圧ガス保安法で定められています。 * 誤った色使いは、事故の原因になります。 *
可燃性ガスと不燃性ガスでは、ねじの切る向きが違います。 *
類別/性質 | 小分類 | 例 | ||
---|---|---|---|---|
第一類
酸化性固体 |
塩素酸塩類 | 🚂 マッチ頭薬 * | ||
過塩素酸塩類 | ||||
無機過酸化物 | ||||
亜塩素酸塩類 | ||||
臭素酸塩類 | ||||
硝酸塩類 | ||||
ヨウ素酸塩類 | ||||
過マンガン酸塩類 | ||||
重クロム酸塩類 | ||||
第二類
可燃性固体 |
硫化リン | |||
赤リン | 🚂 マッチ側薬 * | |||
硫黄 | ||||
鉄粉 | ||||
金属粉 | ||||
マグネシウム | ||||
その他のもので政令で定めるもの | ||||
前各号に掲げるもののいずれかを含有す るもの | ||||
引火性固体 | ||||
第三類
自然発火性物質及び禁水性物質 |
||||
第四類
引火性液体 |
特殊引火物 | |||
第一石油類 | アセトン、ガソリン | |||
アルコール類 | ||||
第二石油類 | 灯油、軽油 | |||
第三石油類 | 重油 | |||
第四石油類 | ||||
動植物油類 | ||||
第五類
自己反応性物質 |
||||
第六類
酸化性液体 |
過塩素酸 | |||
過酸化水素 | ||||
硝酸 | ||||
アメリカの損害保険会社のハインリッヒが1929年に発表した法則 9 ) 。
「同じ種類の事故が330件起きたとすると、300件は無傷ですむが、29件は軽い傷害(災害)を伴い、1件は重い傷害(災害)を伴う確率となる」 10 ) 11 ) 12 )
高温で溶かす、劇薬で化学反応を起こす……、そんな工場のイメージはとても事故が多そうな感じがしますが、実はそうでもありません 15 ) 。
研究開発現場、製造現場、輸送時、製品、廃棄物、食……と安全は多岐にわたる 16 ) 。
各工場では、安全第一の標語をかかげ、生産能率より安全を優先させ、労働災害の防止につとめながら生産活動にあたたっている 17 ) 。
ヒヤリハット活動、KY活動、指さし呼称、やりきり厳守 18 )
分類 | 対象物 | |
---|---|---|
有害ゴミ | 蛍光管 水銀 を含む電池 など | |
実験廃棄物 | 放射性物質 PCB 石綿(アスベスト) 発火性、 引火性物質 アルカリ金属 爆発性物質 健康障害を引き起こす化学物質 | |
廃液 | (a)無機系廃液 (b)写真廃液(現像液、定着液) (c)有機系廃液 (d)難燃性有機廃液(含ハロゲン) (e)廃油(機械油、植物油など) (f)シリコンオイル | |
固形廃棄物 | 溶剤に溶けるものは、無機・有機廃液とする。 | |
産業廃棄物 | 試薬瓶・缶 廃プラスティック類 シリカゲル・アルミナ ガラス器具(一斗缶) 金属片・ワイヤー 電線 など 病原性徴生物による汚染物質 | ガラス器具は、一斗缶に入れる ほかは透明ビニールの袋で研究室を記名 4号館北東玄関脇、月末金曜日 |
単位操作の分類 | 背景 | 特徴 | 例 | |
---|---|---|---|---|
溶解 | 溶かす | |||
分離・抽出 | 濾す | |||
加熱 | 🔥 | 温度 |
茹でる、煮る、蒸す 製鉄 1500℃ |
|
冷却 | 💪 第一次産業革命 | 冷ます 酸素 | ||
加圧 | 💪 第一次産業革命 | つぶす、圧力釜 | アンモニア | |
撹拌・混合 | 混ぜる | |||
解砕・分散 22 ) | 砕く、マヨネーズ、チョコレート | |||
乾燥 | 干す | |||
蒸留・分留 | ウイスキー | |||
ろ過・再結晶・塩析 | ||||
電解・電析 | ⚡ 第二次産業革命 | アルミニウム q.64 めっき |
化学反応を起こさせる操作すなわち反応操作(unit process)のほかに、いろいろな物理的な操作を必要とする。この物理的な操作を単位操作(unit operation)という 23 ) 24 ) 。
材料例 | 原料/ 製法 | 用途 | ||
---|---|---|---|---|
塩基(アルカリ) | 灰汁(あく) | 灰 | 灰汁抜き、釉 | |
苛性ソーダ(水酸化ナトリウム) | 食塩/ 電解 | 製紙(パルプ蒸解)、 繊維 (紡糸)、中和、二酸化炭素の吸収除去 | ||
ソーダ灰(炭酸ナトリウム) | 食塩、アンモニア、二酸化炭素/ ソルベー法、安塩ソーダ法 | ガラス工業 | ||
アンモニア | 空気、水素/バーバー・ボッシュ法(空中窒素固定法) | 肥料 、硝酸、樹脂、 繊維 | ||
酸 | 酸敗ミルク | ミルク/発酵 | 繊維 | |
硫酸 | 硫黄/接触法 | 肥料 (硫安)、染料、洗浄剤、中和剤 | ||
硝酸(揮発性) | アンモニア/アンモニア酸化法(オストワルト法) | 肥料 、火薬(硝酸カリウム) | ||
塩酸(揮発性) | 食塩/ 電解 | 食品、 鉄鋼、紙、織物染料 | ||
リン酸 | リン鉱石/湿式法、乾式法 | 肥料 、食品 |
農業革命の前に食べていたものはドングリの実などでした。でもそのままでは渋くて食べられません。 灰汁(あく)抜きをしない。 じゃあ、灰汁ってなんですか? 植物の灰を水に溶かしたものです。 主成分は 炭酸カリウム 。 植物に含まれるシュウ酸などの有害なをアルカリで中和したんです。 ポット(鍋)でアッシュ(灰)を使って調理するからポタージュ。 今では 重曹 などが pH調整剤 として 食品 に使われるけどね。 ワラビの灰汁抜きのレシピをネットで検索してノートに書きなさい。 身近な酸と塩基についてそのpHと成分の化合物を化学式でノートに書きなさい。 pH調整剤について調べてノートに書きなさい。 濃度と電離度の関係をネットで検索してノートに書きなさい。 書き終わったら、近くの人から署名と日付をもらおう。
灰汁を検索してみよう。 大森貝塚 三内丸山遺跡
設問ID=52
山菜の灰汁抜きの料理、あるいは山菜に限らず酢や重曹を使ってpHを制御している料理を作っておいしく食べてレシピや写真をHPやSNSに公表しよう。
食べることができたら、着るもの。文明は衣服からはじまります。 繊維の洗浄のためのアルカリです。 キャラコを洗浄した灰汁が パワージェルボールに変わり、キャラコを中和した酸敗ミルクは 柔軟仕上げ剤へと変わった。
ウールやコットンは極性官能基がついているので、吸水してあたたかですが、水で洗うと縮んでしまう。 だからヘキサンで洗うドライクリーニングをする。 レーヨンやキュポラももとはセルロースなので水には弱い。 ポリエステルとキュポラを組みあわせたウォッシャブルなスーツがはやっている。 ウォッシャブルなスーツ、就活などでも活躍しそうだ。
シャンプー、リンス、洗濯洗剤、柔軟仕上げ剤、キッチンの食器洗い、住まいの洗剤、お風呂の洗剤・・・。 それらの洗剤から具体的商品をひとつ選んで、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、に分類し、 酸性かアルカリ性かpHを調査し、なぜそのような商品設計になっているのか論じなさい。
アンモニア製造におけるハーバー・ボッシュ法、硫酸製造における接触法や、硝酸製造におけるアンモニア酸化法などではいくら触媒を工夫しても収量は変わらない。
植物 は二酸化炭素は気孔から、水は根毛から、そしてその他の元素はイオンのかたちで根毛から吸収する。 したがって窒素、リン、カリウムと言った肥料はイオンの形で水に溶解させねばならない。 18世紀 の産業革命による人口爆発で食糧危機に陥った都市の住民は、 天然肥料にたよっていた肥料を科学技術でなんとかしようと工夫した。 20世紀初頭に確立された空中窒素固定法における アンモニア 合成では、1000 気圧 の窒素と水素を触媒下 600 °C で接触反応させる。
このような高圧・高温での反応は、丈夫な反応釜はもちろん、バルブやパイプも高圧に耐えうる必要がある。 化学プラントのパイプや反応釜の接続は プラント記号で図面に表現される。
窒素と水素を原料にした アンモニア 合成は、ルシャトリエの原理を化学工業に応用した例です。 圧力を温度を変えたときのアンモニアの体積百分率をグラフをノートに描きなさい。
N2 + 3H2=2NH3 + 92.2kJ
(
*
)
含有成分 元素 | 単肥の例 | 原料 | 特徴 | |
---|---|---|---|---|
窒素 | 硫安(硫酸アンモニウム)・尿素・硝安(硝酸アンモニウム)・塩安(塩化アンモニウム)・石灰窒素 | アンモニア | 葉肥 * | |
リン | リン酸カルシウム・過リン酸石灰・ | リン酸 | 果肥 | |
カリウム | 硫酸カリウム、塩化カリウム | 鉱石 | 根肥 |
肥料には、肥料の三要素を一成分含む単肥と、二要素以上含む複合肥料に分けられます。また複合肥料は、配合肥料と化成肥料に分けられます。化成肥料は、肥料の三要素のうち、二要素以上を化学合成で作ったものです 31 ) 。
飢餓を終わらせ、食料安全保障および栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する。
もし人間を中心とした農村開発を適切に行い、環境を保護するならば、農業や林業、漁業が栄養ある食料をすべての人々に提供し、人並みの収入を生み出すことができる。
2030 年までに、生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維 持し、気候変動や極端な気象現象、干ばつ、洪水及びその他の災害 に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する。
すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する。
SDG 6は飲料水や衛生施設、衛生上の範囲を超えて、水質や水資源の持続可能性の問題も取り上げている。そのため国際協力を拡大し、水と衛生の管理向上について地域コミュニティの支援を強化する。
区分 | 部品 | 材料 | |
---|---|---|---|
建物 | 躯体 | 🏞 木材、鉄骨、RC | |
屋根 | ソーラーパネル、ガルバリウム鋼板、瓦、萱 | ||
窓 | 樹脂サッシ、アルミサッシ | ||
住宅設備 | 給湯器 、エアコン、 トイレ、 電池(ESS)、 パワコン(PCS)、 HEMS * | ||
基礎 | 鉄筋コンクリート | ||
外構 | カーポート、緑地 | ||
ライフライン | ◇ 水道、電気( 電池 )、 ガス、 通信(ネット) |
もし、せっぱつまって入った水洗 トイレが溢れていたら。 縄文から平安時代のトイレは、川に直接用便したので、川屋と言われた。
シャワートイレをスマートフォンで操作する 高純水の製造と下水高度処理による窒素とリンの除去<a href="https://edu.yz.yamagata-u.ac.jp/Public/53202/53202.asp"> 無機工業化学 </a>:
<a href="https://edu.yz.yamagata-u.ac.jp/Public/53202/53202_02.asp"> 1000気圧が生み出す肥料と食料―酸・アルカリ工業と水資源― </a>