評価用電気二重層キャパシターにおけるバインダーとしてのCMCについて


山形大学 工学部 物質化学工学科 3年 本田敦哉


実験目的
 ジェリーロール型のリチウム二次電池の製造では、電池反応活物質と炭素材料をバインダーで混練してスラリーとし、アルミニウム箔に塗布することで電極を作成する。携帯電話などの電池反応活物質として使われるコバルト酸リチウムは過充電で劣化しやすいので、バインダーにポリフッ化ビニリデンが使われてきた。しかし、ポリフッ化ビニリデンは溶解するのにNメチルピロリドンなどの有機溶媒を使用するため、電気自動車やスマートグリッドのような大量の電極材料を使う大型電池では処理コストの増大や環境への配慮などの課題があった。そこでポリフッ化ビニリデンに変わってスチレンブタジエンラバーやアクリルなどの高分子材料を水に分散させてバインダーとして使用する試みがなされてきた。しかしながらそのような水分散バインダーを使った場合、スラリーをアルミニウム箔に塗布する際のレオロジーを制御する必要があった。そこでそのレオロジーを制御して塗布性を向上させるためにカルボキシメチルセルロースなどの増粘剤がスラリーに添加されるようになった。しかしながら塗布性を向上させても電池性能を劣化させては本末転倒である。今回の実験では、各種カルボメチルセルロースについて塗布性を評価すると同時に、電気化学的測定を行い、電池性能を劣化させないカルボキシメチルセルロースを増粘剤とする理想のスラリー設計を模索することを目的とした。

実験方法
CNT,SBR,CMCを混ぜて作成したスラリーをアルミニウム箔に塗布し、正電極を作成した。
その後、二つの正電極のCV測定を行った。

○スラリーの調整
アルミニウム箔を、1×4cmに切り取った。
WSCA-65を0.005gカップに計り取り、攪拌した。その後VGCFを0.010g加え、攪拌した。
カップを電子天秤に乗せてSBR分散液を0.03g加えた。

○正電極の作成
 WSCA-65をアルミニウムに塗工した。
 WSCA-65の塗工量は0.005 gであった。
 アルミニウムに塗工したWSCA-65を下記の電池式のセルを作成した。
電池式

Al|WSCA-65,CNT,SBR|5wt%AA|SuS

○実験結果
仁科研グループは、CMC-LiとジェルナーQH300のCV測定を行った。
・WSCA-65
WSCA-65はスラリーの調整でさらさらとした液体となり、アルミニウムに塗りぬくかった。乾燥させると塗れていない部分があった。
・CMCLi
CMC-Liの塗工料は4.3mgだった。炭素のグラム当たりの静電誘導を決めるために計算から静電誘導を導いたところ、最大値は6.62V/s であった。 測定時の正極状態を確認したところ、気泡の発生などの変化は見られなかった。CMC-Liのサイクリックボルタモグラムを見てみると、周回のズレが少ないことから安定して電流が流れていると言える。
・ジェルナーQH300
ジェルナーQH300の塗工料は3.08mgだった。炭素のグラム当たりの静電誘導を決めるために計算から静電誘導を導いたところ、最大値は10.6V/s であった。 ジェルナーのサイクリックボルタモグラムを見ると、CMC-Liよりも炭素量が少ない状態で静電容量が大きいことが見て取れる。 測定時の正極状態を確認したところ、わずかに気泡が発生しており、塗布した活物質上に白い斑点が出来ていた。