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はじめに
固体電解コンデンサの耐電圧と漏れ電流
の単元です。
小単元
概要
1955年にBell.Tel.Labで駆動用電解液に代わるカソード材料として二酸化マンガンを使ったタンタル固体電解コンデンサの発表があった1)。1983年には三洋電機でカソード材料に有機半導体であるTCNQ塩を使ったOSコンが開発された。そしてポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェンなどの導電性高分子をカソード材料に使った固体電解コンデンサが相次いで開発されていった。このような固体電解コンデンサのアノードには主に高誘電率を持つタンタルが使われる。ところが2000年にタンタル鉱石の価格が前年度の4倍近くにまで跳ね上がった。いわゆるタンタルショックである。これまでタンタル鉱石の価格高騰は1983年、1989年と三回あったのだが、4倍近くにまで跳ね上がったのはこの2000年がはじめてであった。タンタル鉱石の価格が高騰するとその代替材料として化学的性質のよく似たニオブが検討される。
筆者はちょうどそのころリチウムイオン二次電池の正極集電体のアルミニウムの研究に取り組んでおり、集電体の耐食性や接触抵抗について同じバルブメタルであるタンタルやニオブとの違いを調べていた。リチウムイオン二次電池では有機電解液を使うため、正極集電体材料に有機電解液中での耐食性が求められる。ところがニオブとタンタルは有機電解液中でかなり違う耐食性を示したのである。
電子機器の高速化に伴い等価直列抵抗を下げるためカソード材料である導電性高分子の開発が現在も進められている。しかし固体電解コンデンサのカソード材料に求められることは大きな導電率ばかりではない。むしろバルブメタルの誘電体の欠陥修復こそ大切であり、だからこそ材料の選択が限られているのである。つまり固体電解コンデンサのカソード材料の導電率と誘電体修復性能は別に考える必要があるということである。
本稿では、上述のような背景のもと、筆者らがバルブメタルのアノード酸化皮膜とカソード材の界面について明らかにしてきたことについて概説する。
ニオブ固体電解コンデンサの開発2)
●バルブメタルの高電場機構による皮膜生成機構3)
これまでの講演4)5)6)
(
1) 
アルミニウム陽極酸化皮膜を用いた固体コンデンサ池田宏之助 (佐賀三洋工業),
Journal Full, (1988).
(
2) 
ニオブ固体電解コンデンサの開発立花和宏,
研究ノート, (
2004).
(
3) 
バルブメタルの高電場機構による皮膜生成機構仁科 辰夫,
固体電解コンデンサ,
講義ノート, (
2006).
(
4) 
ニオブコンデンサ用固体電解質膜の特性評価立花 和宏,
葛Z術情報協会 セミナー, (2003).
(
5) 
固体電解コンデンサの耐電圧と漏れ電流−アノード酸化皮膜の表面欠陥とカソード材料の接触界面−立花 和宏,
葛Z術情報協会 セミナー, (2005).
(
6) 
タンタル・ニオブアノード酸化皮膜の表面欠陥立花 和宏,
葛Z術情報協会 セミナー , (2005).