000.  強磁性体の磁化過程


無機固体化学 の単元です。

小単元

概要

   強磁性体であるが買ってきたばかりのクギ
    磁石なっていないなぜか?
    クギ全体が磁気モーメント揃った微小部分
   磁区分かれており隣り合った磁区では磁気
   モーメント90°または180°の角度なしている
   従ってクギ全体としては磁化されていないから
    しかしクギ外部磁場かけると右図
     磁区境目が移動し原子移動しない
     やがて全体が飽和まで磁化される
    外部磁場ゼロしても磁化完全には
     なくならない残留磁化
    磁化ゼロするには逆方向の磁場
     かけなくてはならない保磁力

  外部磁場強さと向きに対する磁化表わした曲線
   磁化曲線いう右図曲線形によって大まかに
   強磁性硬さ分類することがある
    軟磁性右図(a)飽和磁化保磁力小
      磁気して応用
    硬磁性右図(c)残留磁化と保磁力が大
      永久磁石して応用
    半硬磁性右図(b)残留磁化保磁力は中間
      磁気記録媒体して応用

10-4 強磁性無機固体
   主として酸化物主成分する物質が広く用いられているここでは軟磁性体〜半硬磁性体
    して重要なスピネルフェライト取り上げるちなみにスピネルフェライト発見し工業的応用切り開いたのは日本人加藤与武井武という東工大電気化学教室の教授であり
    TDKという会社名は東京電気化学頭文字ったもの)
 Fe3O4(通称マグネタイトスピネル型構造
   スピネル型構造は非常に複雑なので覚える必要はない
   般にはAB2O4表わされO2−の立方最密充填
   構造4配位サイト1/8イオンA6配位
   サイト1/2イオンBが入っている
   マグネタイト場合4配位サイトFe3半分
   6配位サイトFe3残り半分とFe2入る

  磁気的性質考える場合には磁気モーメント
   互いに反平行なB - A - Bだけ考えれば良い
   この講義ではマグネタイト関連化合物の化学組成
   磁気モーメント関係理解すれば良い

マグネタイト単位式量あたりの磁気モーメント大きさ
 単位式量Fe3O4Fe原子3個あたりの意味
  考え方@Fe2Fe3磁気モーメントそれぞれ4μBと5μB
      AB - A - Bのイオン並びはFe2 - Fe3 - Fe3である
      B磁気モーメント互いに反平行だから4 - 5 - 5結局4なり磁気モーメ
       ント大きさは4μB予想される実測値は4.1μB
      C磁気モーメント大きさは飽和磁化大きさと比例するどれだけたくさん磁化できるか

マグネタイト関連化合物の磁気モーメント大きさ
 (a) NiFe2O4通称ケルフェライトNiは6配位サイト入るイオンB従ってB - A - B
   並びはNi2 - Fe3 - Fe3Ni2磁気モーメント大きさは2μBなので上と同様に考える
   磁気モーメント大きさは2μBと予想される実測値2.3μB

 (b) MnFe2O4通称マンガンフェライトMnは4配位サイト入るイオンA従ってB - A - B
   並びはFe3 - Mn2 - Fe3Mn2磁気モーメント大きさは5μBなので上と同様に考える
   磁気モーメント大きさは5μBとなる実測値4.8μB

(c) Mn0.6Zn0.4Fe2O4通称マンガンジンクフェライトMnもZnも4配位サイト入るイオンA
   ころでZn2磁気モーメントゼロだからイオンAの平均磁気モーメント5.0×0.6=3.0
   μBすると5 - 3 - 5↑となり磁気モーメント大きさは7μBと予想される実測値6.8
   μBこれがスピネルフェライトで達成できる最大値(Znこれ以上増やしすぎると交換相互作
   用の様式が変化して磁気モーメント減ってしまう詳細は省略)

  ページ記したように磁性体その用途によって飽和磁化磁気モーメント大きさ残留磁化保磁力などが最適になるように組成設計される磁気モーメント小さいからといって工業的意味
  小さいというわけではない磁性体化学無関係に思えるかもしれないが金属イオン種類組成それらの結晶構造中の位置など理解することによって様々な特性持つ磁性体設計作り上げることが可能になるこのような知識や作製操作は化学以外のなにものでもない

関連の展示品

参考文献書籍論文 ・URL)