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n型半導体の原子価制御
無機固体化学
の単元です。
小単元
概要
1)p型のNiOの場合には、電荷のひとつ小さいLi+を固溶すれば導電率が上昇した。n型半導体の場合に
は電荷のひとつ大きなイオンが有効になる。
例:酸化亜鉛中の亜鉛をアルミニウムで置換する。具体的には、酸化亜鉛と酸化アルミニウムの混合粉末を
1000℃以上の温度で加熱する。この操作により、Al3+イオンがZnOの結晶格子の中に拡散(固溶)す
る。ZnOの不定比を無視して考え、(1-2x)モルのZnOとxモルのAl2O3を反応させると、上図のように2個のAl3+イオンがZnO結晶格子に組込まれるごとに、2個の(伝導)電子が結晶中に生成する(反応前後とも電荷の総和がゼロであることを確認すること)。これはもとのZnOの「陽イオン:陰イオンの比」が1:1(不定比は無視)であるため、それを守りつつ電荷の総和もゼロに保とうとする傾向の結果である。上の過程の化学反応式は以下のようになる。
≡
(上の過程はZnOにAl2O3を加える操作であるが、見方を変えるとAl3+でZn2+を置換する操作と考えることもできる。陽イオンと陰イオンの比が反応前後で1:1のままであることを確認すること。)
Al3+の固溶によってZn2+がZn+に変化することになるので、これも「原子価制御」である。
Zn2+とAl3+のイオン半径(Shannon&Prewitt)は0.74Å、0.53Åであり、イオン半径が30%程度異なるためにAl3+は1%程度しか固溶できない。それでも、自然に発生する不定比(10-6程度)に起因するよりもはるかに多くの伝導電子を結晶内に作り出すことができる。
☆ 原子価制御の効果:
Al3+なしのZnOの導電率(室温):約10-1Sm-1、
Al:Zn=1:99の固溶体の導電率(室温):約106Sm-1。ほとんど良導体に近い導電率になる。
<補足>
・ZnOの他にも、「一番安定な酸化数よりも、ひとつ低い酸化数でもまずまず安定」な金属の酸化物はn型半導体になる。その場合、電荷のひとつ多いイオンを固溶すると導電率が上昇する。括弧内は固溶イオン
例:SnO2(Sb5+)、CdO(In3+)、In2O3(Sn4+)、SrTiO3(Sr2+をLa3+で置換するとTi4+がTi3+になる)等。