斉藤実（さいとうまこと）

１８５８（安政５）誕生¹⁾、１９３６（昭和１１）²⁾２・２６事件で薨去（こうきょ＝みまかる）³⁾。

現在の岩手県奥州市出身⁴⁾。同郷同世代の後藤新平⁵⁾がきかんぼうというかんじがしたのに対して、こちらの斉藤実はまじめ実直というかんじ。

世界的な大恐慌に見舞われ、農村部の貧困は激しく、改革せねばという気持ちばかりが先走る時代、昭和維新と称して薩摩、長州の出身者などで構成する軍部が力を持ち始めます。軍事政権と衝突して次々と原敬⁶⁾、浜口などが暗殺されます。満を持して就任した犬養毅も凶弾に斃れ（５・１５事件）、国を任せられる人材は誰かと推薦されたのが斉藤実閣下でした。そのようなご時勢ですから決死の覚悟でお引き受けになったと思われます。

ごね得ともいえるばらまき政治に歯止めをかけ、国家の本質的な建て直しのためにはじめた公共事業を中心とする「自力更生」政策は、ルーズベルト大統領の「ニューディール政策」よりも２年も早く、内容も優れていたと評されています。

しかし、歯止めをかけられた側の批判は大きくスローモー内閣などと揶揄された上、大命を拝すると期待していた軍部の反発も大きく、２月２６日５時に官邸にて惨殺されてしまいます。斉藤実閣下は毎朝５時３０分に起床し、体操をされていたそうです。青年将校はその直前の寝起きを狙って５時に押し入ります。もちろん、暴徒が侵入してきたときのために警視総監からしっかりした人を紹介していただき護衛に入れております。この方は２・２６事件で見事に殉職されました。素手では困る、かといって相手を殺すわけにもいかんということで十手を秘書官、書記官にももたせていたそうです。

押し入った暴徒は、護衛の人を殺害したのち、斉藤実閣下の寝室へと侵入します。ことに気づいた春子夫人が「撃つならわたしを撃ちなさい」と立ちはだかったといいます。暴徒は春子夫人の左手や腰などに３発の銃弾を打ち込みそれでも阻止しようとする春子夫人の左わきから起き上がってきた斉藤実閣下の眉間に最初の銃弾を打ち込みます。その後、ぜんぶで４７発の銃弾を斉藤実閣下の体に打ち込み、斉藤実閣下が死んだことを確認してから官邸を出て行き、自決したといいます。

時代はこのののち太平洋戦争へと突入することになります。

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