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金属結合と良導体の電気伝導
無機固体化学
の単元です。
小単元
概要
☆ 金属結合の特徴は、「価電子数より結合の相手の数が多い」こと。そのような状況ができる理由を理解すること。
例題:金属Naは体心立方構造をとっている。Naの価電子は何個か?結合の相手の数はいくつか?
価電子帯・伝導帯のバンド幅:結合の相手の数が多いほど広くなる。
禁止帯の幅:結合が弱いほど狭くなる。
→ 結果として、良導体(金属)では、価電子帯と伝導帯が一部重なる。
→ 金属結合に預かっている電子は、結合性軌道に属して結合を作ろうとする反面、反結合性軌道の
電子の性格(結合を切ろうとする)もいくぶん持っている。
・ 金属Naの中の価電子の様子の模式図(右図)。今注目しているNa原子(中央)は、現在下の原子と結合をしている。しかし、次の瞬間、その価電子は結合を切って別のNa原子の電子と対を作る。そうかと思えば、次の瞬間にはまた…。
このように、一旦作った結合を切ることができるのは、電子が反結合性軌道の性格をいくぶん帯びているからである。結局、中央のNa原子は、8個の結合相手と1/8の時間ずつ結合を作っていることになる(本命の恋人以外に付き合っている人がn人いると、本命の相手とは1/(n+1)の時間しか共有できなくなる)。
・ 金属に特有な性質に、延性・展性(破壊することなしに伸ばしたり薄くしたりできること)がある。金属中の原子ははいつも特定の相手とだけ結合しているわけではなく、常に結合を切って誰でも良いから他の相手と新たな結合を作ることができるから、そのような性質が現われる。
・ 良導体の導電率は、温度が高くなるとわずかに低下する(低下の度合いは、半導体における導電率の上昇の度合いよりもはるかに小さい)。その原因は、σ = neμの式の中のμ(移動度)が温度上昇に伴ってわずかに低下することにある。その理由を模式図で示そうとすると正確さを欠くことになるが、定性的には高温で原子の熱振動が激しくなると電子の受け渡しがスムーズに行えなくなると理解して良い。バケツリレーをするときに、隣の相手との間隔が狭くなったり広がったりすると、バケツをスムーズに渡しにくくなるように。この授業の中では、半導体の導電率の温度変化を理解することが重要であり、良導体の導電率の温度変化はあまり重要ではない。