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真性半導体の電気伝導
無機固体化学
の単元です。
小単元
概要
左図の半導体のエネルギーバンドは、実は外からエネルギーが与えられていない状態。半導体の禁止帯の大きさは、0〜約3.0eV程度である。Siの場合、1.1eVで、これは波長1128nmの光(赤外線)に相当。したがって、Siは可視光を吸収してしまう(これに対して絶縁体は可視光を吸収せず、基本的には透明)。
半導体に光が当たる、あるいは熱エネルギーが供給されると…
価電子帯から伝導帯に電子が「励起」される。光の量が多いほど、また温度が高くなるほど、励起される電子の量は増える。すると、電圧をかけたときには、励起された電子と、「電子の抜けた孔」が、それぞれ水滴と気泡のように移動できるようになる。 → 少しだが、電気を通すようになる!
負極 正極
電子が抜けた孔は負極に向かって動く(代わりにとなりの電子が反対側に動いている)。これも電気を運んでいる。伝導帯の電子ももちろん電気を運んでいる。
伝導帯の電子は「伝導電子」、価電子帯にできた電子の抜け穴は「正孔(ホール)」と呼ばれる。どちらも電気を運ぶので、総称して「電荷担体(キャリア)」と呼ぶ。
伝導電子と正孔の濃度がつねに等しい半導体を「真性半導体(あるいは内因性半導体)」と呼ぶ。電荷担体の濃度(n)が温度上昇によって増える度合いは、という関係式で表わされる(Aは定数、Egは禁止帯の幅。厳密にはフェルミ・ディラク分布、近似的にはボルツマン分布)。導電率(σ)は、σ = neμ (μは移動度、電荷担体の動きやすさ。eは電荷)で表わされるから、温度が高くなるにつれ、半導体の導電率は急激に高くなる。
例題:縦軸に導電率の対数、横軸に温度の逆数をとったグラフを作ると、導電率はどのような線になるか。