000.  イオン結晶の構造を決定する因子(イオン半径比則)


無機固体化学 の単元です。

小単元

概要

大原則イオン結晶@陽−陰イオン間の静電引力最大に陽−陽陰−陰イオン間の静電反発力最小になるような構造

CsCl型構造陰イオンつくる単純立方の体心に陽イオン入る構造
      陽イオン8個の陰イオン囲まれている
 CsClはNaClと同じく1-17化合物なのになぜ
   NaCl型構造らないのだろう?NaClはなぜCsCl
   構造らないのだろう?
 CsClの場合NaCl型構造よりもCsCl型構造取っ
   た方が静電引力大きくなるからNaClの場合Cs
   Cl型構造取ると陰イオン同士の静電反発力大きく
   なってしまうからこれらはイオン半径考える
   すっきりと説明できる
 説明

@今陰イオン大きな円ある規則構造っているとする陽イオンサイズたまたま3個の陰イオンちょうど内接しているとする上図(b)このときr+/r- = 0.155であるこのときには静電引力満足している陽イオン陰イオン接触できているから
Aもしr+/r-0.155よりも大きいような場合上図(c)陰イオン同士の反発力が小さくなるから(c) 構造(b)より安定であるといえる
Bもしr+/r-0.155よりも小さい場合上図(a)陰イオン同士の反発力が大きくなりすぎるから(a)構造不安定になる
Cもしr+/r-0.2247よりも大きい場合平面内にある3個の陰イオン囲まれているよりも陰イオン4面体的に周囲に配置するような位置4配位サイト陽イオン入ったほうが静電引力より大きくできる(d)
Dr+/r-0.414よりも大きい場合陰イオン6個周囲に配置するような位置6配位サイト陽イオン入ったほうがより安定になる(e)
Er+/r-0.732より大きい場合ちょうどCsClにおけるCs+ように8配位サイト入ったほうがより安定になる(f)

  r+/r- 0.155 < 配位 < 0.225 < 4配位 < 0.414 < 6配位 < 0.732 < 8配位


検証1Na+, Cs+, Cl-イオン半径から
   r(Na+)/r(Cl-) = 1.16/1.67 = 0.6946  Na+確かに6配位位置好む
   r(Cs+)/r(Cl-) = 1.81/1.67 = 1.084   Cs+確かに8配位位置好む
     CsClの場合は陽イオン陰イオンよりも大きな特例r(Cl-)/r(Cs+)ってもCl-8個のCs+囲まれた位置好むことが分かる

検証2別な構造でもイオン半径比則はなりたつか?
 例)閃亜鉛鉱(ZnS)構造右図
   陰イオン作る面心立方構造4配位サイト半分に
    陽イオン入った構造
  イオン半径比則の検証
  r(Zn2+) = 0.70Å(Arlensの半径
  r(S2-) = 1.73Å(Arlensの半径
  r+/r- = 0.405  Zn2+イオンS2-イオン
   4配位サイト好む


検証3KClはNaCl型構造CsCl型構造どちら取るだろう?
    r(K+)/r(Cl-) = 1.52/1.67 = 0.91ここからだとCsCl構造りそうなものであるが実際はNaCl型構造これは実はK-Cl間の結合に若干共有結合性質入りこんでいるためである詳細には触れないこのようにきにはイオン半径からだけでは結晶構造説明しきれないこともあるが大抵のイオン結晶おいてはイオン半径比則成り立つ


ここまでのまとめ
  @イオン結晶陰イオン作る規則構造まずあり陽イオンそのすきまのどこかに入っているいう表現方法ると構造説明しやすい
  A陽イオン入る場所は陰イオン半径対する陽イオン半径でおおむね決まるある物質結晶構造イオン半径比の影響大きく受ける

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