伊藤直樹の卒業研究資料

輪講資料

p.8-9 ところで、絶縁体やバンドギャップが比較的大きい真性半導体の場合でも、メンドギャップの間にエネルギー準位をもつような不純物を微量添加することにより、導電率を増大させることができ、これを不純物半導体(impurity seniconductor)という。このような不純物半導体には、n型半導体とp型半導体の2種類がある。前者は、バンドギャップ中の伝導帯に近いところに、電子の詰まったエネルギー準位をもった電子供与性不純物(ドナーdonner:例えばGeに対してAs)を添加したるので、その電子は小さな熱エネルギーで伝導帯に上げられ、自由電子となるキャリアーの電荷が負(negative)なのでn型という。後者は、バンドギャップ中の充満帯の近くに、空の電子準位をもった電子受容性不純物(アクセプターacceptor:例えばGeに対してGa)を添加したもので、充満帯の電子が小さなエネルギーでその準位に上げられ、充満帯にできた正孔がキャリアーとなる(図2.3(c))。キャリアーの電荷が正(positive)なのでp型という。不純物準位にできたn型における正孔とp型における電子は、固体全体に広がったバンドではなく、不純物元素という限られたところに固定されていて、固体全体を自由に移動できないので、キャリアーにはならない。後述の超伝導体を除き、電子伝導性固体内では、キャリアーは結晶の構成原子、不純物、格子欠陥などと衝突して、弾性或は非弾性的に散乱されて、その方向を変えられる。そのため、キャリアーはランダムな運動をしていて、固体内の電荷の移動は全体で打ち消しあっており、電気的中性が保たれている。そこに電場をかけるとキャリアーは衝突と衝突の間には電場方向に移動して電流が流れることになる。前述の電子、正品の他、イオンも固体の電気伝導性に与り得る。そのようなイオン伝導を示すためには、固体を構成するイオンが結晶格子点に強く固定されないこと、また移動を容易にするためには、そのイオンの欠如した格子点(空格子点)が存在することなどが必要である。たとえば、ZrO2にY2O3を固溶させると、4価のZrイオンの空格子点に3価のY3+が入る。すると、電荷のバランスを取るためにY3+の数の半分だけO-イオンが抜けて0-イオンの欠如した格子点が生ずる。このY2O3を固溶したZrO2を加熱すると、O-イオンの振動が盛んになり、ついには隣のブーイオンの空格子点に飛び移るようになる。このような状態となったZrO2に電場をかけると、負の電荷を持つO-イオンは正極の方向に空格子点を伝わって移動していく。すなわち、固体内をイオンが伝導したことになる。さらに、Na2O・11Al20(B-アルミナ)では、Na+イオンの周囲には必ず空の位置が存在しており、加えてNa*イオンの結合は非常に弱いので、Na+イオンによるイオン伝導が約100℃という比較的低い温度でも顕著に起こる。このほか、フッ素化炭化水素鎖中に-SO3H基を導入した高分子イオン交換膜Nation(DuPont社の商標)はH+, Na+などの優れたイオン伝導体である。これらは、燃料電池、二次電池、センサーの電解質、あるいは電解隔膜として用いられる。

p.62-64 第3章電池とエネルギー 3.1化学エネルギー変換装置としての化学電池 化学電池を、酸化還元反応に伴う自由エネルギー変化を電気エネルギーとして取 り出す仕組みを持つ装置、すなわち化学エネルギー変換(energy conversion)デバ イスと呼ぶことにしよう。これは太陽電池などの物理現象を利用する物理電池とは 異なる。電池は本来、独立電源としての機能を有し、コンデンサーのような従属的 受動的な電気エネルギーの~時的な溜池とは異なる。また、最近の電池は益々小 型·軽量化され腕時計,カメラメモリーのバックアップ等では、数年から10年間 もの寿命が保障されている。まさに、コードレス化エレクトロニクス時代を支える 電源であり、能動的なデバイスである。 本章ではその化学エネルギー変換の原理と仕組み、電池内酸化還元物質の化学、 変換過屋のキネティクス、代表的な実用電池と実用化の期待されている新型電池に ついて学ぶ。 3.1.1電池におけるエネルギー変換 常温等圧化における化学反応の最大エネルギー変化はギブスの自由エネルギー変 化(ΔG)に等しい。ある化学反応が完結するまでに放出されるであろうこのΔG (Jまたは、kJ/mo!の単位をもつ)がすべて電気エネルギー(クーロンボルト、 CVの単位をもつ)に変換されたとすると、 -ΔG=nFE(3.1) Fはファラデー定数(電子の電荷(C)×アボガドロ数(N))。ここで、電子数(n) と電圧(E)の意味について以下のような電池反応を想定して検討してみよう。 電池反応は必ず2つの半反応(half action)の組合せからなる酸化還元反応で あり、半反応1と半反応2を次のように表わして、為とnの最小公倍数を用いて電 子を含まない反応式を作れば、これが電池反応式(3.Δ)に他ならない。 (3.2) Ox1+ne1=Red1 Ox2+ne2=Red2 n2×(3.2)-n1×(3.3)2nOx1+nRed2=n2Red1+n1Ox2 ΔGは(3.Δ)式のそれであり、nは(3.Δ)式に関してやり取りされる電子の数であ るから、ここではn=n1n2である。また、E cellは(3.2)、(3.3)式の平衡電位(ネルン スト電位)の差、E1=E2-E1になる。ここで、nの方にはn1,n2が含まれるの に、E。の方にはそれらが含まれないのは不思議に思うかも知れない。これは、 と(3.3)の間の引算をΔGに注目して行ってみるとよく理解できる。 (3.2)×n2 n2Ox1+n1n2e=n2Red1 -ΔG1=n1n2FE1 (3.3)×n1 n2Ox1+n1n2e=n2Red2 -ΔG2=n1n2FE2 -ΔG=nfE cell =ΔG1-(-ΔG2)=n1n2F(E1-E2) (3.5) このように電位は示強因子であるから、量論的な数には無関係である。 E cellを(3.Δ)式の電池反応で示される電池の起電力という。これらを標準状態で扱えば、E cellは標準電極電位の差(E2-E1)で与えられる(図3.1参照)。 上の説明は、(3.1)式が与えられるとして、電池反応を想定してnおよびE cellの後付けしたものであるが、(3.2)、(3.3)式の半反応から出発して(3.1)式を導くのが本来のやり方である。他の成書を参考にされたい。(3.1)式は酸化還元反応のΔGが直接電気エネルギーに変換されることを意味しており、熱エネルキギーを経由しない(燃焼反応も、燃料の酸化、酸素の還元からなる酸化還元反応である)高効率なエネルギー変換の可能性を示している。 電池の理論エネルギー変換効率(theoretical energy conversion efficiency)は、 熱エネルギー(ΔH)をベースにとれば、 εth=ΔG/ΔH (3.6) Eth=ΔG/ΔH すなわち、熱として利用できるのはΔHであるが、電気化学的にはΔGがそっくりそのまま電気エネルギーに変換できると言うわけである。ΔG/ΔHは多くの場合ほとんど1に近い値で、電気化学的エネルギー変換の効率が100%に近いというせっかちな結論がここから出てきてしまう。周知のように、ΔGはあくまでも熱カ学的量であって、定義の中には「可逆変化に際して」という注釈が入っている。したがって、ΔGに対応する(3.1)式のE cellに対しては、「電流ゼロにおける電位差の極限値を持ってE cellと定義する」という電気化学的注釈が入る。現実には、E cellとは電流を流さない開路状態の電圧であって、電流を出力しているときの電池の出力電圧(E)と同じではない。実際の電池効率(s)は電圧効率(E/E cell)と電流効率を含む。電流効率は電池活物質の利用効率で置き換えることができるから、 Εac=(ΔG/AH)(E/E)(Q/Qo) (3.7) QとQoとは、それぞれ現実に電池から取り出された電気量と電池内に有する活物質(active material)の理論電気量である。また、Eは電流(I)の関数であり、これらについては後段で触れる。電池のエネルギー変換の効率は、したがって、出力が電流ゼロに近づくほど、理論効率に近づくと言い直すべきである。ところが、これから述べる電池はすべて電流を出力する(出力W=IE)ことを目的とする実用電池であって、電流を取り出すことを目的としないタイプの電池(イオン電極など電位差を読み取る形式のセンサー類も基本的には電池の構成をしている)とは区別される。実用電池のおもしろさと難しさとは、この(3.7)式中の(E/E cell)と(Q/Qo)をいかに1に近づけるかにある。

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