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 電池便覧<第3版>p282によると、「正極バインダとして、比較的高価であるにも拘わらず、フッ素化ポリマーが用いられているのは
正極での強い電気化学的酸化雰囲気に耐える必要があるという要求特性からきている。一方、負極バインダに関しては逆に強い
電気化学的還元雰囲気に耐える必要があるが、この点フッ素系ポリマーは必ずしも好ましくない。むしろ、スチレン/ブタジエンなどの
炭化水素系ポリマーの方が還元雰囲気に対して安定である。」とあった。しかし、これは何のデータをもとにして述べられているのかが
不明瞭である。また、SBRは耐酸化性が悪いために正極用バインダとして使用できない*1という文言があったが、これもなぜバインダーが
酸化に弱いのかということに関する根拠が示されていない。たしかに、ポリマーは燃焼させたら酸化し水と二酸化炭素になる
ではバインダとして使用しているポリマーは電解液中は酸化還元するのだろうか。本当に正極と負極で使用しているポリマーの違いは、
単に酸化に弱い、還元に弱いという議論で分けてよいのか。本研究ではここの点について調べていきたい。
→現段階(4/18)では具体的な実験方法はまだ見つかっていない。先生助けて!!!!!

バインダーをうっすら塗ってCVを測定して、酸化と還元についての議論をした論文を何回か見かけたが、どうも説得性に乏しいように思われる。 ともあれ、そのような文献を収集して要約してみたらどうだろうか?<立花


 立花先生曰く、バインダーとして使用するポリマーの双極子モーメントが電池にどうやら影響を及ぼしているらしい。
このポリマーの双極子モーメントとバインダーが加えれれたスラリーと正極集電体の間に生ずる接触抵抗の関係を
数式で表現していきたい。予想では単位はC/mとなるようだ。

参考文献
*1 リチウムイオン電池用水系バインダー 鵜川 晋作 増田 香奈 梶原 一郎 JSR TECHNICAL REVIEW No.121/2014 

6/1更新

 PVDFが正極、SBR(BM-400B)に適しているというのは、PVDFは酸化に強く還元に弱い、逆にSBR(BM-400B)は還元に強く酸化に弱い
といった説明のされかたをよく見かける。しかし、それを示す定量的なデータやそれに基づく議論はほとんど見当たらない。
強いて挙げるなら、カットオフ電圧を4.2Vと4.5Vの二つの条件で充放電曲線をとったとき、4.5Vのときでは初回クーロン効率が
PVDFは95%、SBRは92%となり、この差がバインダーの一部が酸化したことを示唆するものだという。しかし、この主張にはいくつかの
疑問が残る。一つは、カットオフ電圧の設定だ。通常、電池には内部抵抗が存在しその分だけ電圧は下がる。それを考慮したうえで
上記のカットオフ電圧ではそもそも活物質が反応しきる電圧まで到達していたかわからない。また、酸化の議論の対象としてバインダーを
挙げているのにもかかわらず、コバルト酸リチウム、アセチレンブラック、PVDFの合材を使って議論していた。以上のことからバインダーの
酸化還元については不明瞭なことがまだ多い。よって本研究では、はたして電池の中のバインダーが充放電の過程において酸化または還元反応を
起こしているのかということを明らかにしていきながら、バインダーとして使用されるポリマーに求められる「結着」以外の機能を調べることを
目的とする。