リチウムイオン二次電池の正極活物質としてスピネル構造のマンガン酸リチウムが知られている。マンガン酸リチウムのスピネル構造の平面表現を図1に示す。1)
しかしながら、論文記載の表現やコンピュータディスプレイの表示では平面状であるため、立体的な構造状態が把握しづらいという課題がある。
そこでスピネル構造を安価な紙で制作することを目的とする。今回用いる正八面体は図2のようなマンガンを中心とした酸素の配置である。
制作する立体構造にできる空間は実際の構造におけるリチウムの空間である。制作する立体図形では大きな空間ができるが、酸素の原子半径が大きいため、図3のように本来は小さな空間となる。
準備したものを以下の表1に示す。
名称 | 入手先 | 個数 | CabinetID |
---|---|---|---|
A4用紙 | 73枚 | ||
セロハンテープ | 伊藤研究室 | 4ロール | 86 |
つまようじ |
正八面体を折るためにまずA4用紙を自分から見て横長に置き、図4の通りロシア国旗のように三等分した。 次に右上の角を上側の折線上に合わせ、左下の角を始点とし図5のように折った。一度開き、左下の角を下側の折線に合わせて折った。 この際に先ほど付けた折線と三等分した線が図6のように重なるようにする。三等分の線と重ね合わせ、できた角の頂点を通る折線を付ける作業を繰り返し、図7の用紙を作った。できた折線に沿って折り込み図8の正八面体を作った。
次に作成した正八面体同士を面ではなく辺を共有させ、図1をもとに正八面体の横軸を前にして見て、平面構造を作った。 x,y,z軸方向から見て同じように組み立て図9の立体にした。
図10,11,12のようにx,y,z軸方向いずれから見てもリチウム空間にあたる空洞ができた。
今回の立体スピネル構造の制作を通して、リチウム空間がどのような仕組みで出来ているのか理解を深めることができた。
実際に作ることで構造のでき方に納得させられたので、安価でもあるのでぜひ作ってみてほしい。
1) 菅野了次. リチウム二次電池材料の結晶構造と材料特性. 日本結晶学会誌. 1998, vol.40, p.262-271.