ダニエル電池の作成、及びそれを基準電池として
抵抗尺と共に用いた場合の未知電池の起電力測定

2017/06/02 高橋宏義

★プロローグ★

2017年、5月第一週(2017/05/19-05/23)にかけて
後藤武、高橋宏義、鈴木崇広から成る高橋システムエンジニアリング(TSE)は
抵抗尺を完成し、製品は無事納期までに伊藤先生の手による厳正な検品を通過した。
しかし、当時本来の製作目的である起電力測定は未だ着手されておらず、
一度の実戦も経ずして学生実験その日を迎えつつあった。
そこで、今回行った実験が基準電池としてのダニエル電池の作成および、
抵抗尺を用いた未知電池の起電力測定である。
今回の実験は、疎かになりがちであった自身の化学知識、技術を
補填したと共に、我々に抵抗尺を実際に運用した実績と貴重なデータをもたらした。

ダニエル電池の作成

概要

未知電池の起電力を測定するにあたり、起電力測定の基準となる既知電池が必要となる。
これを基準電池をいい、今回は標準電池を用意できないため、代わりとしてダニエル電池を
を用いる。以下に、材料、回路図、実験方法等について記載する。

材料一覧

表1 ダニエル電池使用器具


名称規格IDキャビネット
銅線φ1.2mm,50mm1366580下段
亜鉛線φ2.0mm,50mm1349580下段
ビーカー100ml×3---85右上
メスシリンダー50ml------
ガラス棒---------
精密電子天秤---------
圧着端子R-2,φ4.0mm28584右下
ダブルクリップ------個人管理
なべ子ねじM4×10mm---個人管理
セロハンチューブ------個人管理


表2 電解液材料

名称使用量ID
硫酸銅五水和物0.194[g]13374
硫酸亜鉛七水和物0.218[g]1620
純水60[ml]13675

実験手順

@電極として金属線を切り出した。切り出した金属線の長さは、亜鉛、銅線共に5 mmである。

A電極を作成した。まず、圧着端子に金属線を固定した。
次に、ダブルクリップと圧着端子をなべ子ネジと付属のワッシャーを用いて固定した。

Bセロハンチューブを作成した。セロハンチューブはシート状となっているセロハン紙から
作成する必要がある。今回は、複数回端を折って袋状にした後、セロハンテープで
貼り合わせて固定した。参考画像を記載する。


C電解液の調整を行った。まず、溶媒としての純水をメスシリンダーを用いて二つの100 mlビーカーに
30 mlずつ計量した。その後、精密電子天秤を用いて硫酸銅五水和物を0.194 g,硫酸亜鉛七水和物を0.218 g秤量し、
それぞれのビーカー内の純水に溶かし、ガラス棒で混ぜて電解液を調整した。
このとき、硫酸銅水溶液の濃度は0.025 mol/l,硫酸亜鉛水溶液の濃度は0.026 mol/lであった。

Dビーカー内に設置したセロハンチューブ内に硫酸銅溶液、外側に硫酸亜鉛水溶液を
注入し、電極を直前に磨き上げて銅電極をセロハンチューブ内、亜鉛電極を対極に
固定した。

結果

以下に結果を記載する。
実験当時の時刻、気温及び湿度は以下の通りである。
時刻気温湿度
16:0028.1℃36%
表3 実験室状況

ダニエル電池が完成した。
撮影を忘れたので、写真は割愛する。
電解液濃度は、以下の通りとなった。
精密秤量天秤の精度を考慮し、有効数字4桁とする。

電解液名称電解質濃度[mol/L]溶質名称溶質重量[g]
硫酸亜鉛0.25硫酸亜鉛・七水和物0.218
硫酸銅0.26硫酸銅・五水和物0.194

表4 電解液詳細

結論

ダニエル電池の理論起電力を以下の通り計算する。

念のためテスターで計測した値は1.10Vであったので、ある程度以上はダニエル電池が正確に
作成されたことがわかった。

ダニエル電池と抵抗尺を用いた未知電池の起電力測定

概要

ダニエル電池を完成させ、非常に精度の高い既知電池(=基準電池)を手に入れた。
次の実験「ダニエル電池と抵抗尺を用いた未知電池の起電力測定」では、
実際に抵抗尺と未知電池、基準電池、電源を用いて未知電池の電圧を
明らかにしていく。

実験手順

回路図を以下に掲載しつつ説明する。

@電源(上図NI-MH)にニッケル水素乾電池を用いる。 標準電池E0(上図DANIEL-CELL)に先ほど作成したダニエル電池を
接続し、検流計の針が振れなくなる抵抗尺の値を記録した。 このとき記録した抵抗尺の長さを、l0とおく。

A電源(上図NI-MH)にニッケル水素乾電池を用いる。 未知電池E(上図UNKNOWN-CELL)に用意したアルカリ電池を
接続し、検流計の針が振れなくなる抵抗尺の値を記録した。 このとき記録した抵抗尺の長さを、lとおく。

実験結果

実験@のときの抵抗尺の長さlは0.45m,
実験Aのときの抵抗尺の長さl0は0.63mであった。
キルヒホッフを用いて未知電池の起電力を測定した結果、
以下のようになった。結果を載せる。

実験後、テスターを用いた場合の標準電池の起電力を測定したところ
1.08Vであり、キルヒホッフの法則を用いた場合の未知電池の起電力は1.51Vまで
落ちていた。また、テスターを用いて未知電池を実測した結果、1.49Vであった。

結論

実験中の電池消耗の影響が標準電池、未知電池共に顕著に現れた 今回の実験では、
テスターでの計測値と理論値に無視できない程度の誤差が
表れた。
電解液濃度をきわめて薄く設定したことが、要因のひとつとして考えられる。

小沢昭弥.現代の電気化学 国際化時代の英語テープ付きテキスト.1990,329P.,