2018年2月21日、卒業研究発表も終わり、大学生生活最後の一年に終わりが近づく頃、 その日は突然訪れた。 そう、翌日の2月22日は私の先輩である山形大学院理工学研究科物質化学工学専攻博士前期課程立花研究室所属白谷貴明生誕の日である。 大恩ある白谷貴明先輩の誕生日を祝うため、何か贈り物を差し上げたいと考えた。
最初、私は1746年にオランダのピーテル・ファン・ミュッセンブルークによって発明されたとされるライデン瓶を プラスチックコップとアルミホイルを使って作成したものをプレゼントし、蓄電した静電気によってビックリさせようと思ったが、 ライデン瓶は様々な科学イベントなどで使用されており、渡したらすぐに見抜かれてしまうと考えた。 そこで私は関口メンディ(理希)先輩に相談したところ、 アルミホイルとサランラップを使ったフィルムコンデンサを作成することを提案していただいた。 調べてみると、フィルムコンデンサをサランラップとアルミホイルを使って作っている例はあった。 作成例は主にアルミホイルとサランラップを重ねてセルとし、、塩化ビニルパイプに巻き付けていた。 せっかくの誕生日プレゼントなので、オリジナリティを出したいと思い、塩化ビニルパイプをSUS管に置き換え、 リードの役割を持たせようと考えた。SUS管の両端に触れると静電気によってビックリするという狙いである。
材料名 | メーカー | 値段/円 | 入手先 | 備考 |
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アルミホイル | 東洋アルミ | 158 | ファミリーマート山形大学工学部店 | 25p×10m |
サランラップ | 旭化成 | 203 | ファミリーマート山形大学工学部店 | 22p×50m、厚み11μm、比誘電率ε r=5.5 |
SUS管 | − | プライスレス | メンディ | ピカールで表面を磨いた |
以下に電池式を示した。
まず、電極面積S [p2]を決め、理論静電容量C [F]を求めた。
アルミホイルの幅は25p、サランラップの幅が22pであるため、ただ重ねるだけではアルミホイル同士が接触し、コンデンサにならない。 その為、アルミホイルの端、約3cm〜4pをカッターを使って切り落とした。切り落とした端面が後にSUS管に巻き付ける工程でショートの原因になる可能性があった。
SUS管への巻き付け工程のことを考えるとサランラップ、アルミホイル、サランラップ、アルミホイルの順番で重ねた方が巻き付けが簡単なのだが、 サランラップを直接、作業台に接触させると作業台に張り付き、巻き取りが難かった。 巻き取りの終点にリードとなるアルミホイルも一緒に重ね合わせた。
前工程で重ね合わせたセルを対極のリードとなるSUS管へ巻き取っていく。左右で均等な力で巻き取りを行わないと片側だけ太くなってしまうので注意が必要であった。
完成したフィルムコンデンサを白谷貴明先輩に贈呈する前にLCRメーターを使って静電容量を測定した結果、0.3μFという結果になった。 実測静電容量が理論静電容量より小さくなった原因について、 均一に巻き取れなかったために生じたしわで電極間面積Sが保証できないことが考えられる。
ついに2月22日になった。白谷貴明先輩に前日、作成したフィルムコンデンサを渡したところ、 フィルムコンデンサと見抜かれることは無かったが、 5秒かからずにアルミホイルで作ったリードを引き抜かれ、フィルムコンデンサを壊されてしまった。 静電容量が足りなかったのか、静電気によってビックリすることもなかった。
コンデンサと見抜かれないという狙いは達成できた。 しかし、静電気によってビックリさせることはできなかったため、コンデンサの作成方法に改善の余地があると考える。