水素社会の実現に向けて
■緒言
今回の研究は、水素の爆発力を自動車のエンジンに応用できないかという、水素エンジンのアイディアから始まった。
水素の爆発では、「水」しか排出されず、CO₂をまったく排出しない自動車を作ることが出来ると考えた。
私たちが住むこの地球上では、現在、自動車などから排出される、CO₂の排出量削減が求められている。実際に自動車のハイブリッドシステムや、燃料電池車・電気自動車など、徐々に環境対策の為の技術が私たちの生活に浸透してきている。しかしながら、ガソリンやディーゼル燃料などをシリンダー内で燃料を燃焼させるICE車の生産台数は世界全体で2019年時点98%で、まだまだ普及していると言える状態ではない。
CO₂の排出量削減には、電気自動車の他にも、燃料電池車や、水素エンジン車がある。これらはどちらも、CO₂の排出が無いものの、なかなかその社会の実現に進んでないのが現実である。
ここまで画期的な技術が浸透しない事には、様々な理由があると考え、その理由について調べを進めた。
まず初めに、燃料として使用する水素の製造でCO₂を輩出してはならない。水の電気分解には大きな電力を要し、その電力をCO₂の発生源となる火力発電所などに頼ることは、意味がなくなってしまう。その為、水素の電気分解に使う電力の確保を、再生可能エネルギーから賄う事が重要である。また水素の発生自体を、水の電気分解ではなく、別の方法の、検討・開発ができれば、水素社会の実現に向けての大きな一歩になる事が考えられる。その他、水素の供給方法など、水素ステーション諸々のインフラの整備も大きな問題として浮き彫りになっているのが現状である。 今回の研究では、そのような様々な観点から、水素社会実現に向けて、検討・研究をしたものをもとに、水素社会の問題点や、改善方法、可能性についてまとめるものである。 ■実験方法
用意したもの
PC、スマートフォン、ノート、ペン
実験手順
まずは、緒言でも述べた、水素社会実現に向けた取り組みが、どこまで進んでいるのか。CO₂フリー水素の製造方法について、どのような方法が現在使われているのか、また、製造可能であっても使われていない技術がある場合、どんな理由で実用化されていないのかを、についてインターネットや本を活用し調べた。
その後、各題について発見した真実や、それを元に見えてきた問題点や利点、欠点をあぶり出した。また、それらの欠点や問題点は、本当に改善の余地がない問題なのかを研究した。
インターネットを見ても探しきれない事や、自分では理解が出来なかった事については、先生方に相談した。
これら「現在の水素社会実現に向けた取り組み」について各項目に分け、細かく深掘り出来る様に結果にまとめた。
■結果
「現在の水素社会実現に向けた取り組み」
「水素の製造」
電力を必要とする方法
・
水を電気分解
電力を必要としない方法
・水と物質を化学反応させて発生
・
固定水素化反応物質で水素発生
・油田・ガス田 随伴ガス 等
・褐炭 等
・本多・藤島効果
「水素の貯蔵方法」
①気体として貯蔵
→体積が大き過ぎて、車のタンクに入る量が少ない。
水素自動車、マツダ・RX-8 ハイドロジェンREを例に挙げると、
こちらのサイトで「タンクの圧力は35Mpaに対応」「水素使用時の航続距離は100kmを実現」と表記がありました。
https://www.mazda.com/ja/innovation/technology/env/hre/
この試験の際に35Mpaで充填したのか否かが調べきれませんでしたが、最低でも
100km÷(110L×350気圧)≒ 0.0026km/l
でロータリー水素エンジンは一気圧気体水素1リッターで2.6mという燃費計算になりました。
もしこの試験の際に35MPaで充填させていたとするとかなり燃費は悪い計算だった。
②気体圧縮して貯蔵
トヨタ自動車が発売した燃料電池車「ミライ」は一回の充填で700㎞もの距離を走行可能だが、その水素タンクの圧力は70Mpaと大気圧の700倍となっている。
その為、周辺の部品にもかなりの耐圧性が求められる。
700km÷(122.4L×700気圧)≒0.0082kmで、ミライの燃料電池方式だと一気圧の気体水素1リッターで8.2mしか進まない様です。
またミライのタンク容量を流用し122.4ℓで70MPaで充填した場合、マツダのハイドロジェンREの水素燃焼方式をとった場合は223kmの距離を航続可能である。
ちなみに、1気圧は1024hPaです。 MPa単位にすると、0.1024MPaになります。
1MPaは大気圧の10倍。
医療用ボンベ等を取り扱うDMGの高圧ガスボンベで14.7MPaで、70MPaという圧力は、利便性とともに、危険性も高いという事になる
。
35MPaは大気圧の350倍の圧力で充填する為、危険も伴う。
③液体として貯蔵
冷却にはかなりのエネルギーが必要だという事が分かった。(水素の沸点-259.2℃)
■考察
水素エンジンの開発において、燃料となる水素の製造にはCO₂の発生が付き物だと感じていたが、CO₂フリー水素は様々な方法で製造可能だという事が分かった。その為、水素社会実現に向けても、CO₂フリー水素製造の、高効率化や大規模化が必要であると感じた。また、水素の運搬や、貯蔵の問題にも様々な解決策があると感じた。
■参考文献
・黄 燕 清,水素貯蔵合金の最近の進歩と応用,総説,資源 ・素材学会誌{,107},1991{, No.8}
・小 林 紀 ,高効率ク リーンエネルギー 自動車,計測 と制御, 第39巻 第1号 ,2000年1月号,P64~P71
・佐野 充,各種自動車の総合評価と持続可能なシステム,Journal of Human Environmental Studies, Volume 5, Number 2
・安井 至,化 学 と教 育, 49 巻 2 号 ,2001 年,P94~96
・朝日新聞 サビと太陽光で水を分解 次世代エネの水素コスト安く?
https://www.asahi.com/articles/ASN7B4W7YN6TPLBJ00B.html
・MOBY 水素自動車の仕組みについて!燃費や価格の問題点から代表車種まで
https://car-moby.jp/article/car-life/hydrogen-car/#i-4
・MONOist 燃料電池車「ミライ」が使う水素は大気圧の700倍、搭載部品も高圧対応が必須
https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1412/18/news103.html
・GAZOO 水素にまつわる2つの誤解―水素エネルギーの可能性
https://gazoo.com/article/future/161018.html
・WEB CARTOP 自動車エンジンの燃焼エネルギーは大半がムダになっているという噂は本当か?
https://www.webcartop.jp/2018/03/212190/
・最高効率の冷却方法を発見 NIMS JST
https://www.nims.go.jp/news/press/2020/05/lecian00000dzefz-att/p202005121.pdf
・MAZDA
https://www.mazda.com/ja/innovation/technology/env/hre/