2018/06/11更新

1. 工業電解プロセス

工業電解プロセスとは電気化学システムを用い、電子伝導体である電極とイオン伝導体である電解質との界面で起こる電極反応を利用して、より質の高い物質の製造、材料の表面処理を行うプロセスのことである。
工業電解プロセスは目的によって大きく2種類に分類できる。一つは物質の製造に直接電解反応が利用されるもので食塩電解の塩素、アルミニウム製錬のアルミニウムがその代表的なもので電解製造と呼ぶことができる。ここでは金属の電解採取のほかに、無機、有機の製品の合成に用いられることもあり、これらは電解合成と呼ばれることもある。もう一つは物質の純度を高めるために電気分解を利用するもので銅をはじめとする金属の電解精製がその代表的なものである。

2. 工業電解プロセス

電気分解を行う装置を電解槽あるいは高温溶融塩では電解炉という。基本的にはアノード、カソードの2種類の電極、電解質、隔膜の4つの要素から成り立っている。アノードでは脱電子反応が、カソードでは受電子反応が起こる。電解質中には反応に関与する物質がイオンまたは分子の形で存在しており、原料の供給、製品の輸送の役割も果たす。隔膜はアノード生成物、カソード生成物の分離のために必要に応じて利用されている。

電解質としては酸またはアルカリといった水溶液系が最も多く利用されている。一方で固体電解質とは固体の状態で、イオン電導性を有する物質をいい、1000℃付近の高温での酸素イオン導電体のジルコニア、水素イオン導電体の高分子固体電解質などがある。これらは電解質であるとともに隔膜の役割も果たす。

電解槽中での反応は電極と電解質の界面で起こるため、反応速度は電極面積に比例する。多孔性電極を用いて電極面積を大きくする方法もあるが、通常は電解槽を積み重ねて工場の単位面積あたりの反応面積を拡大する方法が用いられている。水溶液を用いる電解においてはこの電解槽の電極接続方法に単極式と複極式の2種類があり、それぞれ単極式電極、複極式電極と呼ばれる。以下の図1、2にその接続様式を模式的に表したものを示す。単極式は低電圧、大電流に適した様式であり、電解槽電圧は単層電圧に等しいが電極に電気を供給する導体が大量に必要となり、ここでのオーム損失が大きくなる。複極式では一つの電極で片側がアノード、反対側がカソードの2つの役割を担っており、槽電圧は単槽電圧×槽の数となるので単極式に比べて大電圧、小電流の様式である。ここでは槽間の接続導体は不必要でオーム損失は小さくなるが、液を通しての短絡電流を防ぐなどの工夫が必要である。

図1 単極式電極の接続様式

図2 複極式電極の接続様式



参考文献

小沢昭弥.現代の電気化学.初版,新星社,1990年,118-120p.