2018/05/21更新

1. 電気二重層構造の概念モデル

電極-溶液界面におけるイオンの界面分布に対する具体的なイメージを与える構造モデルについて、はじめに提案された概念はヘルムホルツによる平板コンデンサモデルであった。このモデルでは同一電極系において微分容量が電位によらず一定となることになるため、実際の系に適用するには単純すぎた。
次に提案されたグーイチャップマンのモデルでは一定の距離にすべての電荷が集まるのではなく、ある幅をもって分布すると考えた。この場合、その分布はボルツマン分布則に従い、表面電荷と電位の関係をポアソンの式で近似できるとして解析された。
グーイチャップマンがイオンを点電荷と仮定したのに対してシュテルンは実際のイオンにはそれぞれ自身の大きさがあり、加えて水和による体積増加があるため電極からある距離以内には接近できないイオン面が形成されると考えた。結果的にシュテルンのモデルはヘルムホルツとグーイチャップマン双方のモデルを結合した形となった。

2. 特異吸着アニオン

表面過剰量が特に大きいイオンは特異吸着性イオンと呼ばれる。
理想分極性電極と平衡状態にある化学種に関し、ギブスの吸着等温式が成り立つと仮定した場合に表面過剰量は電極上の表面電荷密度と界面張力の関数で表される。
特異吸着性はアニオン種によって異なり、後述するヘルムホルツ面の電荷密度を分析することで評価できる。

3. デヴァンサン,ボックリス,ミュラーの電気二重層モデル

実際の系でアニオンの特異吸着が起きる場合の状態を具体的に示すモデルがデヴァンサン,ボックリス,ミュラーによって提案されている。以下にそのモデルを示す。

図1 デヴァンサン,ボックリス,ミュラーの電気二重層モデル

水和イオンになることで、ある距離以内に接近できないカチオン面を外部ヘルムホルツ層と呼ぶ。その内側にある特異吸着アニオンが吸着した層を内部ヘルムホルツ層と呼ぶ。

参考文献
小沢昭弥.現代の電気化学.初版,新星社,1990年,24p.