1. 電流・電位・電気量の測定とファラデーの法則

Electrolysis
(サイエンスビュー 化学総合資料集 第3章 14 電気分解1
総合図説化学 第3章 第5節 4-1 電気分解)


物質化学工学実験II

準備と予習(実験1週間前)

セルフプランニングと実技優先

この実験は具体的な方法を自分で設計(デザイン)して進めるセルフプランニング型で行われます。また達成度評価はもの作り重視の実技優先型で行われます。

実験の予習と自分で準備するもの

自分の能力に応じてすぐ実験に取りかかれるように予習に行わないと、実験室に来てからとまどうことになります。用語等でわからないことがあるときは、実験前に「電気化学」などの講義の担当教官などに質問してください。

テスターについては説明書をよく読み使用方法を熟知しておいてください。テスターに関するトラブル(故障や電池切れ)は自分で対応できるようにしておくこと。自信のない人はアナログテスターはおすすめしません。

【ポイントゲット】第1回の実験日までに,テスターを購入し,自分の名前の記述されたテスターおよび購入時のレシート(または,同等品)をノートに添付し,写真をGoogle+に投稿してください.(提出先→Google+)

イントロダクション(実験前日)

事故防止のため危険行為を避け安全な実験を

半田ごてを過熱させたり、工具を振り回したりすると、重大な事故・火災・怪我の原因となるので絶対に行わないようにすること。また器具や装置の故障の原因となるので半田ごて、その他のツール類を落下させたり、衝撃を与えたりしないでください。

実験のねらい

実験の到達度評価の基準(成績判定と単位認定について)

「電気分解」のテーマに関する到達度評価の基準は「実験進捗票」による。科目としての成績判定と単位認定については、各テーマのとの到達度から総合的に行われる。

準備されているもの(不足しているものがあるときはすぐに申し出ること)

実験テーマ2,3の「電池の起電力と分解電圧、工業化学への応用」の器具と共通になっております。器具の破損時は、原則補充いたしません。

使用する前に,乾電池の電圧を確認すること。電池の消耗は常に注意し、節電を心がける。万一、みの虫コードなどの半田が取れたりした場合は、自分で補修する。

図 1.ゼムクリップを手のあぶらで汚すとうまくめっきできなかったり、重さが正しくはかれなかったりします。
回路計は誤った使い方をすると壊れます。電圧計は回路に並列に,電流計は回路に直列につないでください.

実験

スケジュール

このテーマは後始末もふくめて12:45〜15:55で終了する。時間延長はなく進捗状況によって評価される。

実験ノートには,実験年月日,氏名,気温,湿度を必ず記述してください.Google+に実験ノートの写真を投稿したときに氏名がないと評点が得られないことがあります.

天秤が混雑することが予想されますので,硫酸銅の調製とめっき前のゼムクリップを重さの秤量は,空いている方を先にしてください.

硫酸銅水溶液の調製

総合図説化学(第一学習社)「第3節 溶液の性質-3.溶液の濃度」を参考にして、0.5 mol・dm-3 CuSO4を3 mL調製する。

必要な硫酸銅の質量をTAの目前で電卓によって計算し、質量の値をグラムで表示させる。 電卓に入力して良い数値は、式量(CuSO4・5H2O=249.68)、濃度(0.5 mol・dm-3)、容量(3 mL)のみとし、メモリー機能やプログラム機能は使用禁止とする。 操作は秤量と合わせて3分以内、計算は一回限りとする。 正しい値を表示させたら5点。次に、計算した値に従い、上皿電子天秤で、硫酸銅を時計皿にはかりとる。 試薬を時計皿以外にこぼしたり、計算値より量を多く取りすぎたりしなければ、5点。


銅めっき

総合図説化学(第一学習社)「第5節 電池と電気分解-4.電気分解」を参考にゼムクリップに3 mgの銅めっきをする。

ゼムクリップを洗浄・乾燥し、めっき前のゼムクリップの質量を秤量瓶(ふた付き)と精密化学天秤で0.1 mgの桁まで読み取る。




電流密度を見積もるために、ノギスを使ってクリップの直径を測る。ゼムクリップの周囲の長さと電解液に沈める長さから電極面積を計算する。(正確に電流密度を計算したい場合は、実際の電解液に沈む部分のクリップ面積)
求めた電極面積から、電流密度が0.02A/cm2となる電流値を求める。
めっきする銅の量と求めた電流値から、ファラデー定数を用いてめっきに必要な時間を求める。

0.5 mol・dm-3 CuSO4電解液中で、ゼムクリップに通電する。電流の操作は抵抗尺の長さを変化させて行う。(下記の回路図)
きっかり3.0 mgの銅をめっきする。

反応式
アノード:2H2O→O2+4H++4e-
カソード:Cu2++2e-→Cu


めっき後のゼムクリップを洗浄・乾燥し、めっき後のゼムクリップの質量を秤量瓶(ふた付き)と精密化学天秤で0.1 mgの桁まで読み取る。 めっき後とめっき前の質量差からめっきした銅の質量を求める。

めっきした銅の質量が3 mg±0.2 mgなら60点、3 mg±0.5 mgなら40点、3mg±1 mgなら20点、とする。 5回までチャレンジしてもっとも精度が高いめっきを得点とする。

【ポイントゲット】精密電子天秤に,銅めっきがされたクリップと秤量瓶(ふた付き)の質量が表示されたディスプレイ および めっき前のクリップの質量が記述されたノートの写真をGoogle+に投稿してください.提出先→Google+

図2.回路図
図3.浴電圧の測定
図4.めっき後のクリップの写真


【アドバンスト】電流計を自作してみよう

みんなテスターの電流計を使って電流を測定してましたね。

では、テスターが作られる前にはどうやって電流を求めていたのでしょうか。


方位磁針にエナメル線を南北方向に100回巻きます。

エナメル線の両端を鑢で磨き、金属部分を露出させます。


電池と1kΩの抵抗とエナメル線をい巻いた方位磁針をみの虫コートで接続します。
すると、方位磁針に巻いたエナメル線がコイルになり、電流が流れると電場を発生させます。
発生した電場の強さによって方位磁針の角度がずれます。

本来は銅めっきの量からファラデー法則を使って流れた電流を計算し、その時の方位磁針の角度のずれを基準として、電流計の較正を行いますが、
時間がかかるのでテスターの電流計で流れた電流を確認し、ずれた方位磁針の角度を基準とします。

基準とした電流と角度から、未知の電流があるとき、方位磁針の角度のずれθをtanθに代入し、基準電流にかけることで未知の電流を求めることが出来ます。
現在は、テスターを買えば電流を測ることが出来るけど、テスターがなかったころはこんな風に電流を求めていたんだ。
今って便利!!

電流の計算方法

便利なものを使うだけで終わらず。作る意識を工学部ではぐくんでください。
単位には、全く関わらないですが、今の学生に是非ものをつくる楽しさを実験を通して感じてほしいです。TAより


実験の後始末

廃液処理

硫酸銅粉末の入っていたビーカーの洗液は、10mLのビーカーへ。 硫酸銅水溶液および廃液などは進捗票の確認後に指定の容器へ。 めっき後のゼムクリップは各自保管して、ノートに添付すること。それ以外の器具は元の通りに戻す。

単位認定

実験ノートに進捗票を貼って、提出してください.評点の集計について第3回目に説明します.提出期限は、定期試験期間の初日です.

アナログ式回路計

測定箇所にテスターの棒を当て、指針の真上で値を読み取る。ミラーの写る指針の影と指針が重なるようにすると真上から値を読み取れる。読み取るときは片目で読み取る。

図4. アナログ式回路計の正しい見方

参考資料

学習・教育目標について

この実験テーマにおける学習・教育目標とJABEE(日本技術者教育認定制度)に準拠した精密応用専修コース教育プログラムの関係を以下に示す。

学習・教育目標
(A):専門知識の習得と継続的学習 電気化学、ファラデーの法則、電気めっきの実践的知識および実技
(B):データ収集と解析および問題解決能力 印加電流、浴電圧、通電時間、析出質量の測定および電流効率の計算、トラブルシューティング
(C):創造力およびコミュニケーション能力の育成 めっき条件の選定およびめっき用電解槽の設計と製作、製作手順のデザイン、先輩や共同実験者の技術情報の交換、報告書の作成
(D):人類の幸福に貢献できる技術者の育成 小容量ビーカーを使った廃液量減少努力による環境への配慮、グリーンケミストリーの実践

実験を始める前の説明・板書事項について

説明事項

  1. 実験を始める前に、手を洗ってから実験を始めてください。(インフルエンザや麻疹などの流行時は、特に、注意を促がす。)
  2. グループ分け、1つのテーブルで2人一組、合計16グループにわける。場合によっては3人一組となる。第2、3回の実験課題では、2グループ共通の実験器具があります.(A−1,A−2)=Aクラス、(B−1,B−2)=Bクラスのように2グループ共通をクラスと定義する。グループ分けは、優秀な人と組むことお勧めします。
  3. 器具を取りに行って頂きます。各クラスから1名ずつ、TAの後について、実験準備室に行ってとってきてもらう。(1〜3の実験の課題全ての器具が揃うまで、繰り返し取りに行く。)
  4. 「この実験は、具体的な方法を自分で設計(デザイン)して進めるセルフプランニング型で行われます。また、達成度評価について、もの作り重視の実技優先型で行行います」と口頭で伝える。
  5. 実験を始める前に、配布器具の確認を行うこと。不足物がある場合は、すぐに申しでること。破損や紛失への補充は、行いません。また、基本的に、消耗品の補充は行いません(教職員が必要と認めた時のみ補充します。)。
  6. 実験終了時刻を明確に伝えること。Aコースは、12:45〜15:55で片付けまで終了。以後の達成度評価(進捗票へのサイン)はありません。
  7. 実験中、トイレ休憩、図書館への資料収集、忘れ物を取りに行くことは自由です。ただし、災害時の安全確認と出席のため、教職員に断ってから行くようにしてください。
  8. 次回の実験である第2,3回の「電池の起電力と分解電圧」、「工業化学への応用」が2グループ共通の器具を交互につかう必要があるので、最初にどちらのグループが第2回目の課題を行う決めてください。
  9. 廃液は、全て廃液入れに、産業廃棄物(薬包紙など、薬品に接触したもの全て)は、各クラスの産業廃棄物入れに入れてください。
  10. 電池をショートしないように注意をする。
  11. 水道は原則使用禁止。ただし、薬品が着いた場合は、速やかに水道水で洗い流すこと。
  12. TAから正誤票の配布がありますので、テキストの修正に注意してください。(ある場合)
  13. 最後に、質問を受け付けます。
  14. 提出期限は、ありません。ただし、成績を提出する関係上、試験期間前に提出するようお願いします。詳細はテキストのレポートの節を読んでください。