電流・電位・電気量の測定とファラデーの電気分解の法則

19512005 近純也

目的

硫酸銅水溶液に浸したゼムクリップに電気を流して銅を析出させめっきする。

流す電気の量と析出した銅の重量がファラデーの電気分解の法則に従っていたら、

3mgの銅を精度よくめっきできるかどうか試みる。

実験概要

電気分解は電子の授受により引き起こされる現象で、析出する物質の量は、電子の授受に関係したイオンの価数と、

電解に使われた電気量が関係しているというのが、ファラデーの電気分解の法則である。

ファラデーの電気分解の法則

析出量[g]=(電流[A]×モル質量[g/mol])÷(9.6485×10^4C/mol×原子価)

本実験では、硫酸銅(Ⅱ)水溶液を用いてゼムクリップに銅メッキを施し、実験前後の質量差で法則通りに析出したか評価した。

使用物品

名称 必要数量
ディスポカップ30ml 1
秤量瓶 1
ノギス 1
ガラス棒 1
洗瓶&イオン交換水
ゼムクリップ 1
スパチュラ 1
時計皿 1
抵抗尺(6V) 1
ミノムシコード(赤黒) 各2本
電池ボックス 1
単3電池 1
電子天秤 1
精密天秤 1
ダブルクリップ 2
テスター 1

使用試薬

名称 式量 必要量[g]
硫酸銅(Ⅱ)5水和物 249.68 0.3745

実験手順

(1) 硫酸銅を時計皿に計り取り、ディスポカップに入れ、30mlのイオン交換水で溶解させた。

(2)ゼムクリップの直径をノギスで計測した。

(3)ゼムクリップの重さを精密天秤で量った。

(4)(電極面積[cm^2])=(直径[cm])×π×(電解液にクリップが浸る長さ[cm])より、

電極面積[cm^2](ゼムクリップが電解液に浸る面積)を求めた。

(5)(電流値[A])=(電流密度[A/cm^2])×(電極面積[cm^2])より、電流密度が0.2[A/cm^2]となる電流値を求め、

(めっきに必要な時間[s])=((質量[g])/(モル質量[g/mol]))×(ファラデー定数[C/mol])×(1/(電流値[A]))×2より、

3㎎の銅を析出させるのに要する時間を求めた。

(6)以下の図1のように回路図を組み立てた。

図1. 回路図

(7)テスターのダイヤルをmAに合わせ、(5)で求めた時間だけ通電させた。

(8)ゼムクリップを取り出し、精密天秤で秤量した。

結果

・ノギスでゼムクリップの直径を測ったところ、0.10mmであった。

・精密天秤で、ゼムクリップの重さを量ったところ、0.3827gであった。

・ノギスで電解液に沈めるクリップの長さを測ったところ、1.4cmであった。

・(電極面積[cm^2])=(直径[cm])×π×(電解液にクリップが浸る長さ[cm])より、電極面積[cm^2]を求めたところ、

(電極面積[cm^2])=(0.10×10^-1)cm×π×1.4cm=0.043982cm^2であった。

・(電流値[A])=(電流密度[A/cm^2])×(電極面積[cm^2])より、電流密度が0.2[A/cm^2]となる電流値[A]を求めたところ、

・(電流値[A])=0.02A/cm^2×0.043982cm^2=8.7965×10^-4Aであった。

・(めっきに必要な時間[s])=((質量[g])/(モル質量[g/mol]))×(ファラデー定数[C/mol])×(1/(電流値[A]))×2より、

3㎎の銅を析出させるのに要する時間を求めたところ、

(めっきに必要な時間[s])=((3×10^-3g)/(63.546g/mol))×9.6485×10^4C/mol×(1/(8.7965×10^-4A))×2=1035.649801s

つまり、1035.649801s×(1min/60s)=17.26083002minであった。

・めっきの浴電圧は0.59Vで、通電電流は6.28Aであった。

・めっき後のゼムクリップの質量は0.3905gであった。よって、めっきした銅の質量は、

0.3905g-0.3827g=7.8×10^-3g=7.8mgであった。

考察

めっきした銅の質量が多かった理由

本来、銅は3mgめっきするはずであったが、実際は、7.8mgの銅をめっきするという結果に終わってしまった。私は、この理由は、

ゼムクリップの直径の計測ミスによるものであると考える。

ゼムクリップの直径が0.10mmというのは明らかに小さい。これを想定すると、計算上、電極面積は本来よりも小さく算出されてしまっていることになる。

電極面積の値が本来よりも小さければ、電流値も小さく算出されてしまう。結果、めっきに必要な時間は、大きく算出されてしまうため、

この時間でめっきをしてしまった結果として、銅の質量は、本来よりも多くなった。私は以上のように考えた。

参考文献

[1]野中ら:「技術レポート作成と発表の基礎技法(改訂版)」,コロナ社(2019)

[2]西脇永敏・伊東忍ら:「続 実験を安全に行うために (第 4 版)」, 化学同人 2020

[3]製品安全データシート 硫酸銅 内藤商店(株)